「ウチカレ」で大苦戦…北川悦吏子の恋愛ドラマはもうオワコンか?

エンタメ 芸能 2021年2月19日掲載

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「ロングバケーション」世代も脱落か。日テレ系ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」の低空飛行が続いている。初回は視聴率10.3%だったものの第2話は8.8%に。1話で脱落した人が多かったようである。恋愛ドラマの女王・北川悦吏子さんの脚本だけに、意外な苦戦ぶりだ。

 セリフ回しが古臭い、オタク描写にリアリティがない、そもそも娘に彼氏がいないからって騒ぐ方が時代遅れで大きなお世話。ネット評はなかなか手厳しい。確かにロンバケど真ん中世代の筆者が見ても、時々気恥ずかしいものがあった。

 いつまでも少女のような、奔放で天真爛漫な恋愛小説家。菅野美穂さんが演じる水無瀬碧は、北川さんが描く典型的なヒロインである。言いたいことを言い、感情表現が豊かで、周囲を振り回す。特に異性を。「半分、青い。」の鈴愛しかり、「あすなろ白書」のなるみしかり。やりたい放題に見えるし、実際、結局はおいしいところを持っていく。そんなヒロインは賛否が分かれる。昔は憧れた人が多かったが、今は首をかしげる人が増えたということだろう。

 思えば「私ってサバサバしてるから」と語る「自サバ」女性が増えたのは、「ロンバケ」ヒット後ではなかったか。おそらく山口智子さん演じる葉山南がロールモデルだろう。それだけ魅力的なヒロインだった。山口さんが素敵という一言に尽きるかもしれない。気は強いけどお人よしなところもあって、見た目も態度もサッパリしている。同じタイプのヒロイン・「東京ラブストーリー」の赤名リカは恋に敗れたが、ハッピーエンドをつかんだ南。彼女に憧れた女性は多かったに違いない。

 ただ、ふつうの女性はドラマほど上手くはいかないものだ。南気取りの「自サバ」女性に手を焼いた人も多いことだろう。彼女たちの内面は実にナイーブであり、取り扱いが面倒なこともしばしばだ。そもそも南も、自分がサバサバしてるとは言っていない。「大人のオンナとして振る舞っているけれど、中身は女の子のまんま」という会話を後輩と交わしている。そう、内面は「女の子」なのだ。それは天真爛漫さや可憐さと片づけられない。いい大人なのに、「女の子」と言ってはばからない幼稚さや鈍感さとも隣り合わせである。

 しかし北川脚本では「少女の感性は善」であるし、「いくつになっても心が少女である女性は特別」という選民意識も垣間見える。そしてヒロインたちを迎えにくる、白馬の王子様。どんなに気が強くても、やっぱりお姫様扱いされたい。だって女の子だもん。そうしたヒロインに潜む幼さや無責任さを、いまの「自己責任」社会ではズレていると感じる人が増えてきたのではないだろうか。

高評価の「その女、ジルバ」との対照性 それでも北川ドラマが強い理由

 一方、今期ドラマで高評価を得ているのが「その女、ジルバ」である。こちらは漫画が原作だが、主演の池脇千鶴さんの好演も初回から話題になった。

 面白いことに、池脇さん演じる笛吹新は、「ロンバケ」の南と同じ境遇から始まる。華々しいキャリアから外れ、恋人とも別れ、年齢は40歳。南は30歳だったが、モデルとしては落ちぶれ、結婚式当日に花婿に逃げられて物語は幕を上げる。年齢的にも社会的にも「崖っぷち」の、傷ついたヒロインだった。

 ただ新の傷の癒し方は、北川ドラマ的ではない。まず自分らしく働ける場所を見つけ、年長の女性や同性の同僚たちとの絆を育む。自分で居場所を作り出そうとする姿勢。女性の年齢やルックス、恋愛にとらわれない世界。令和ならではのフラットな目線とも言えるし、ある意味では過去の北川ドラマ以上にファンタジーである。だが、だからこそと言うべきか、早くも多くのファンをつかんでいる。

「ウチカレ」に目を転じると、親子は港区のタワマンから都落ちしないために、娘の恋人探しを始める。男を落とす振る舞いリストを嬉々として作り、編集者にちょっかいを出す母。何かと幼なじみの男性宅に駆けこみ、娘も同級生男子とつかず離れず。だって女の子だもん。北川ドラマは、清々しいほどに変わらないのである。

 今は視聴率だけで評価すべきではないというが、多くはSNSでの反響を中心に語られる恋愛ドラマ。物議を醸すヒロインや設定は、一周まわってSNSと相性がいいとも言える。酷評だらけの「ウチカレ」も、実は3話以降の視聴率は微増し続けている。つまり北川ドラマはオワコンどころか、とても現代的な構造を持つ強いドラマとも言えるだろう。

 つい一言言いたくさせる物語を紡ぐ、北川先生の手腕はさすがだ。思ったことを黙っていられない北川ヒロインを、心の中に住まわせている人は案外多いということかもしれない。

冨士海ネコ