京都・醍醐寺が「仏像搭載」の衛星「宇宙寺院」を打ち上げへ 祈願をメモリーに保管、衛星に格納することも可能

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 ロケットで宇宙に散骨する宇宙葬が一時期話題になったが、ついに宇宙寺院まで……。

 豊臣秀吉が盛大な花見の宴を催したことで知られる京都の真言宗醍醐寺。この名刹がベンチャー企業「テラスペース」とともに2年後、人工衛星を打ち上げる。内部に小さな本尊や曼荼羅を備えた“寺(テラ)衛星”だ。

 テラスペースを設立した京都府のIT企業、カゴヤ・ホールディングスの北川貞大代表取締役によると、

「一昨年の夏ごろ、弊社が宇宙ビジネスへの進出を考えていた折、サーバーをご利用いただくなどお付き合いのあった醍醐寺さんから“国境を超えた祈りを届けたい”との話を伺いました。そもそも真言宗の教えには宇宙という観点が色濃い。そこで宇宙寺院の提案をさせていただいたのです」

 昨年2月、テラスペースが発足。人工衛星の開発・運用を主な事業とした。

「衛星は10センチ×20センチ×30センチの小さな箱型です。現代は誰しも生まれ故郷を離れ、菩提寺に参拝する機会も失われている。宇宙にお寺があれば、どこに住もうとも空を見上げればいつでも参拝ができますね」

 とは北川氏。

「まずは手始めに今月8日、地球と宇宙の安全を祈る“宇宙法要”を地上で行い、その模様をYouTubeで配信しました。みなさんの御祈願もHPで受け付け、そのデータはメモリーに保管し、衛星に格納する予定。打ち上げ後も、みなさんからの願いごとは衛星に転送いたします」

 恋愛成就か世界平和か。祈願の申し込みは殺到しているという。自らの切なる思いや願いが天空を回っているのは「心の支えになるのでは」と北川氏。衛星の位置はアプリで確認できるようにするそうだ。

 にしても、打ち上げにはいくらかかるのか。

「従来は製作から打ち上げまで2億円から5億円ほど。弊社の場合は欧米等のロケットに衛星を搭載してもらい、また衛星開発の低価格化も目指しており、総額1億円くらいでしょうか」

 それでも高いように思えるが、「醍醐寺さんには当初の資本金(870万円)の一部を出資してもらっていますが、開発・運用の費用を頂戴するわけではありません」

 衛星の寿命は10年ほど。

「宇宙寺院を維持するためのスキームを検討中です」

 と北川氏は続ける。

「たとえばこの衛星を利用した防災網の構築といったビジネスです。衛星は地球を周回しますから、世界中の自治体が潜在的な顧客になるのではないかと考えています。宇宙祈願や宇宙法要は現在、無料ですが、いずれはお金を払っていただける価値のあるものにしたい。御札や御守りの販売も考えていますし、御寄進もぜひお願いしたいところです」

 宗祖空海や秀吉も想像だにしなかった時代の到来。

週刊新潮 2021年2月18日号掲載

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