「橋本聖子」五輪相が「組織委」トップに一本化されたワケ、就任をためらう2つの理由

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 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の新会長の候補が、橋本聖子五輪相(56)に絞られた。森喜朗会長(83)の女性蔑視発言による辞任表明を受け、検討委員会が候補を検討してきた。一本化されるまでの経緯はどういったものだったのか。また、この数日、橋本五輪相は就任をためらっていると伝えられていたが、その理由についてレポートする。

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利害が一致

「森さんが川淵三郎さん(Jリーグ初代チェアマン)に禅譲する形で、会長を託したという話が出回り始めた頃から、官邸は“これはマズい”という空気に包まれていきました」

 と話すのは、今回の件に関係する官邸スタッフのひとり。

「早い段階から、加藤さん(勝信官房長官)が、組織委員会の武藤さん(敏郎事務総長)に連絡し、“川淵さんに会長のバトンが渡らないようにうまく振る舞ってもらえないか”と伝えていました。『加藤・武藤』は財務省の先輩後輩のラインで、これが機能し、“就任を依頼されても川淵さんはそれを受け入れない”ことでとりあえずは収まった。世間の反応を気にして? うーん、それ以前に、問題を起こして辞める人がなんで後任を決めるの?という永田町であってもある意味で非常識なことを森さんがやったものだから、それは受け入れられないでしょという風に官邸は受け取り、そのように動いたということですね」

 と同時に、後任会長候補の選定作業が水面下で進んでいった。

文教族のテリトリー

「組織委員会は森さん以下、文教族のテリトリーになります。副会長の遠藤さん(利明元五輪相)を中心として、自分たちの傀儡(かいらい)、意のままに動いてくれるうるさくない人にやってもらいたいという思いがありました。一方で官邸としては、高齢ではないクリーンな女性というのは外せない候補者の条件でした。その意味で、橋本さんは双方にとって意中の候補であり、だから最初から名前があがっていたわけです」

 御手洗冨士夫キヤノン社長(85)を委員長とし、8人のメンバーで構成される候補者検討委は、「男女平等、多様性などの実現」「五輪パラへの深い造詣」「国際感覚」などを条件に候補者を絞ってきたとされているが、

「小谷実可子・組織委スポーツディレクターや山下泰裕JOC会長の名前も出ていましたが、基本的には『橋本さんで行く』という“政治”が決めたレールの上を走っていただけと言えるかもしれません」

 森氏から川淵氏への禅譲が密室と批判され、今回の検討委には透明性が求められたものの、ガラス張りにできない大人の事情があったと見える。

 他方、早くから候補になぞらえられていた橋本氏は就任をためらっていると伝えられていた。どういう事情があるのだろうか?

 全国紙の政治部デスクに聞いてみると、

「実際、橋本さんは水面下でのオファーに難色を示してきたようです。まずは立場の問題。橋本さんは自民党の比例区から出馬しているということもあり、様々な公平性や不偏不党を求められる会長就任にあたっては大臣のみならず議員辞職は避けられないという見方が強くあります。警視庁のSPだった9つ上の旦那さんと結婚し、旦那さんの連れ子も合わせて子供は6人。未成年のお子さんもいらっしゃるようです。森さんのように無報酬でも影響なし、悠々自適という人とはかなり状況が異なる。けれど、このゴタゴタで報酬を受け取りづらいという環境もあるんですよね」

“断れるなら断りたい”

 そしてもう1つが、「セクハラ」問題だ。

「ソチ五輪の閉会式後の打ち上げで、日本選手団の団長だった橋本さんは、フィギュアスケート日本代表の髙橋大輔にキスしていたことを週刊文春が写真つきで報じました。キスを強要した、セクハラ、パワハラだと報じられたために橋本さんは当時、針のむしろ状態に。そして今回、“自分が会長になると、その時のことが蒸し返され、世界に打電される。もうあの写真は見られたくない”などとこぼし、会長就任には後ろ向きだった。2019年に初入閣する際にも同じような理由で、入閣を固辞するつもりでしたが、最後は周辺の説得に折れたという経緯もあります」

 残念ながら、今回、候補となった時点で過去の「キス」問題はすでにあちこちで蒸し返されてしまっているのだが……。

「橋本さんは5期を数える参院議員で、自民党の参院政策審議会長、会長を務め重鎮と言われても何の不思議はない存在です。なのに、そんな風には誰も見ていない軽量級で、自分では何も決めないし、決められない人。だからこそ敵を作ることなく、大臣にまでなり、組織委の会長候補となっているわけですが、“断れるなら断りたい”というのが本音だと思います」

 むろん本心は他人には推し量れまい。

 しかしもしも無理強いの末の会長就任ならば、それが本当に「女性を平等に扱った」結果、あるいは「女性の活躍」の象徴だなどと言えるのだろうか。

デイリー新潮取材班

2020年2月18日掲載

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