話題の「PUI PUI モルカー」、制作秘話をエグゼクティブプロデューサーが語る

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2分40秒に起承転結

――「マイリトルゴート」は、18年に東京芸術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の修了制作として発表された。グリム童話の「狼と七匹の子山羊」に着想を得たパペットアニメで、「SHORT SHORTS FILM FESTIVAL & ASIA2019」ジャパン部門優秀賞、「パリ国際ファンタスティック映画祭(フランス語版)」グランプリを受賞するなど、国内外で多くの賞を受賞した。

杉山:面白いと思いました。一緒に何か作ろうという話になったんです。

――だが、シンエイ動画と言えば、最近は「STAND BY MEドラえもん」など3DCG作品で知られる。なぜ手間のかかるコマ撮りを?

杉山:当社も劇場版「クレヨンしんちゃん」のオープニングでは、クレイ(粘土)を使ったコマ撮りで作っていますから、そうした制作への理解があるんです。しばらくすると、監督から手作りのモルカーとともに、企画が提案されたんです。

――テレ東での放送が決まる前に?

杉山:当初は20~30分の中編映画で考えていたんですよ。でも、こぶし大ほどのモルカーの人形を見たら、子供向けの作品にしたほうがいいかもしれないと思いました。テレビシリーズになれば、商品化もできるかもしれませんし……。

――とはいえ、監督が修了制作した「マイリトルゴート」は、かなり恐い作品でもある。任せて大丈夫と思ったのだろうか。

杉山:まあ私も様々な作品に関わってきました。監督とお話をして、一緒に面白い作品ができると確信しました。

――杉山氏は、かつてフジテレビで、「愛という名のもとに」(92年)などヒットドラマを演出。テレビ朝日では「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」のチーフ・プロデューサーを務めていた。

杉山:見里監督は、作品に人間の業を入れるのが上手い作家ですが、本人はすごくソフトな方です。そうこうするうち、「きんだーてれび」での枠で放送できる運びになりました。子供向け番組ですからね、子供に安心してみてもらえるよう、コンテでの打ち合わせはしっかりやりました。

――こうして1年半をかけ、作品が完成した。

杉山:全話がいっぺんに出来上がってきたんです。一気に拝見しました。これはスゴイのが出来たと思いました。

――具体的にはどの様なところが良かったのだろう。

杉山:まず可愛い。そして、わずか2分40秒の中に起承転結がちゃんとある。これはすごいことですよ。さらにユーモアがあって、なおかつちょっと毒もある。しかし、我々がいい作品だと思っても、ヒットした原作があるわけでもなく、オリジナル作品というのは読めないところがありますからね。

――反応はすぐに現れた。

杉山:1月5日に第1話の放送があり、公式Twitterのフォロワーは当初1000人程でした。アニメ好きや動物好きの方が見てくださったのだと思います。ところが、この週はたまたま成人の日があり、三連休だったのですが、すぐにフォロワーが10万人になったんです。これには驚きました。SNSの拡散力は圧倒的だと思いました。なんだ!この番組は!という口コミであっという間に拡がったのだと思います。また、通常はビジネスにはなりにくい、2分40秒という短い尺の番組であったことも良かったのだと思います。ネット配信もされているので、短い尺なら気軽に見ることが出来ますから。

――何が評価されたのだろう。

杉山:可愛いことと、可愛いだけではないところでしょう。癒やされますしね。監督自身もモルモットを飼っていて、本人も癒やされているそうですから、作品に通じるものがあるのかもしれません。さらに、動物好き、車好き、ファンシー好きを取り込んで、類似作品が少ないことも幸いしていると思います。

――作品にはどんなメッセージが込められているのだろう。

杉山:監督が以前、インタビューで答えていましたが、渋滞や割り込み、煽り運転などでイライラすることが多い車社会で、もしもモルモットが車だったら、癒やされるのではないか。渋滞でモルカーの後ろについたら、丸いお尻を眺めているだけでも癒やされる、と。

デイリー新潮取材班

2021年2月17日掲載

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