英国・豪州が誘う日本のファイブ・アイズ加盟 高まる中国に対する不満が背景に

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 日本と英国は2月3日、テレビ会議形式で行われた外務・防衛トップ会談(2プラス2)で「英国が今年インド・太平洋地域に空母機動部隊を派遣する際、自衛隊と共同訓練を行う」ことで合意した。中国が海上警備を担う部局に武器使用の権限を付与した海警法を2月1日から施行したことにも反対する立場を表明した。

 日本が英国との間で2プラス2を初めて開催したのは2015年のキャメロン政権の時である。その後2018年に日本国内で初めて英国軍が共同訓練を実施した。英国軍が国連制裁に基づく北朝鮮船舶への監視活動に参加したのもこの時からである。

 両国はこれまで軍事協力のための協定締結や共同訓練を繰り返し、「準同盟国」化を進めてきた(2月4日付読売新聞)が、このような状況について2月5日付朝鮮日報は「日英同盟が復活しつつある」と報じている。

 経済面でもEU離脱を決定した英国は、日本との関係を格上げしている。新型コロナウイルスのパンデミックにもかかわらず、英国は昨年日本との間で経済連携協定(EPA)を締結し、「アジア回帰」の動きを鮮明にしている。

 日英両国は重要な多国間協力体にお互いを引き入れる動きも活発化している。日本は、米国、豪州、インドとともに進めている安全保障協力体(クアッド)に英国が参加することを支持する一方、英国は米国、カナダ、豪州、ニュージーランドと機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」に日本が参加することを提案している。

 昨年7月、河野防衛相(当時)は英保守党の中国研究グループのセミナーでファイブ・アイズとの連携強化の考えを表明した。英下院外交委員長もこれを歓迎する意向を示し、昨年9月にはジョンソン英首相は議会内で「日本のファイブ・アイズ加盟は英国側の考えである」と述べた。

主な活動は「情報共有」

 ファイブ・アイズは、第2次大戦初期、ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相が戦艦プリンス・オブ・ウエールズで行った首脳会談から始まった。「通信傍受した暗号情報を共有する」という政治的合意を基に1943年に米英間で協定が締結され、戦後、カナダ、豪州、ニュージーランドが加盟国として追加された。このような経緯からわかるのは、ファイズ・アイズの主な活動は各加盟国の海軍を中心とする軍の情報共有であり、その根底にはシーパワーとしての海洋戦略的思考が存在しているということである。東西冷戦期にファイブ・アイズは、インテリジェンス情報を共有することで西側諸国の勝利に貢献したとされているが、その後、ファイブ・アイズを取り巻く国際環境は急激な変化を遂げた。

 1998年にアフリカの米国大使館が相次いで国際テロ組織アルカーイダから爆弾テロの被害を受けたことから、ファイブ・アイズは市民社会に潜んでいるテロリストの動静を把握することに注力することになったからである。米国のスノーデン氏が2013年「ファイブ・アイズは一般市民のプライバシーを侵害するような諜報活動を行っている」と告発したことから、日本でも「ファイブ・アイズは市民社会の敵のような組織だ」というダーティーなイメージが広がったが、ファイブ・アイズの主な任務はあくまで軍事情報を交換することである。

 日本は昨年12月「ファイブ・アイズ加盟国とのインテリジェンスを含む情報に関する協力を一層強化する」との姿勢を改めて表明したが、「近年、日本とファイブ・アイズ加盟国との間での関係強化の動きが頻繁に見られる」との指摘もある(1月22日付現代ビジネス)。海上自衛隊と米国海軍との間の情報共有が進んでいることは周知であるが、昨今の北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射に対する警戒・監視を通じて、日本とファイブ・アイズ加盟国との間の連携が進んでいる。

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