森喜朗「密室伝説」 就職も首相就任もエンブレム問題も「みんな密室だった」

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自分に近い人の意向を

 こうした森氏の思考パターンを考察するうえで、わかりやすいのは近年の自民党総裁選に関する発言かもしれない。

 議員引退後も、「キングメーカー」として振る舞ってきた森氏は、総裁選のたびに考えを示してきた。

 その際、常に槍玉に挙げられたのは石破茂元幹事長である。

 森氏は石破氏に離党経験があることを再三批判してきた。

 2012年の総裁選では石破氏が地方票で圧勝したのに、国会議員票で安倍晋三前首相に負けたことをわざわざ当人に指摘したこともある。

 むろん「国会議員票で負けた意味」を考えるのは石破氏が考えるべき課題であろうが、一方で森氏は、自身が持て囃す他の候補者が「地方票で完敗した意味」については気にならないようだ。

 ここから読み取れるのは、少数の選ばれた人、あるいは自分に近い人の意向をより尊重したがるということではないだろうか。

 そして今回、強い批判を浴びたのが冒頭に触れた川淵氏への後継指名だ。

 わざわざ見える形で自宅に呼びつけて「次は頼む」と勝手に依頼する。

 これがおかしなことだと思わなかったのも、就職や首相就任などでの“成功体験”があったからではないか。

「偉い人」が「ルール」や「民意」にとらわれることなく、物事を決める。それこそがベストだという思考パターンだ。

 むろんこの方法がうまく行くことも珍しくない。

「みんなの意見」を聞いていては何も決まらないことも多い。

 また自民党に限った話ではなく、こういう考え方の政治家が他にいるのも事実。「議会制民主主義というのは期限を切ったあるレベルの独裁を認めること」と語ったのは民主党(当時)の菅直人元首相である。

 果たして森氏の退場は、日本的な密室システムの崩壊につながるのか。

 政治部デスクに聞いてみると、

「森さんはすでに政界引退し、選挙の洗礼も受けていませんし、会長に就任した経緯を振り返っても『ザ・密室』でした。今回の『川淵禅譲案』は、その不透明さを批判するSNSでの動きを受け、累が及ぶのをなんとしても避けたい政権側がNOを突きつけたわけです。菅政権が磐石ではないという事情はあるにせよ、永田町の常識は世間の非常識と言われた時代が終わろうとしているのかもしれません。権威とか既得権益やそれを振りかざすような振る舞いは、これまで以上に攻撃対象となるでしょう」

デイリー新潮取材班

2021年2月16日掲載

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