企業の「炎上」をカバーする保険が登場 補償範囲はどこまで?

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 なまめかしいタイツ姿の女性のイラストでSNSを中心に批判を集めた「アツギ」もしかり、今やSNSでの「炎上」は、企業にとって大きなリスクである。

 対応を誤れば社長が頭を下げ、新聞に謝罪広告を出すはめになることも。批判がデマ化して拡散しても、削除させるのは簡単ではない。

 東京海上日動火災保険がSNSやウェブメディアによる“炎上被害”をカバーした保険を発売すると発表したのは1月26日のこと。具体例で言うと、飲食チェーンなどで異物混入事件が起き、ネットに悪質な書き込みが広がった場合、それを収束させるための専門のコンサルタント費用や、会見や謝罪広告の費用を補償するというもの。取り扱いは4月からだ。

 特徴は中小企業でも入りやすいこと。売上高200億円クラスの飲食業だと、年間約3万5千円と、思ったより高くない。

 保険アナリストの山野井良民氏が言う。

「風評被害が起きた場合の対応コストは、企業が考えている以上に膨れ上がっており、保険のマーケットとしても、これから大きく成長する分野です」

 この「SNS風評被害保険」、新聞でも紹介されたが、当の東京海上日動火災に聞くと、困惑気味なのである。

「正確に言うと、この保険は単独で売っているものではありません。当社で扱っている企業向けの『施設賠償責任保険』、『請負業者賠償責任保険』、それに『生産物賠償責任保険』に特約としてつけるものです。言うなれば、実際に事故やトラブルが起き、それがネットに波及してしまった際の“後始末”をするためのもの。ですから“あそこの料理はネズミの肉”などと噂を立てられて、飲食店に損害が出ても、それを補償できるわけではありません。あくまでまず現実に生じた不祥事があり、根も葉もない噂や風評を立てられた時に限って保険は適用となります」(広報担当者)

 噂の類には「尾ヒレ」がつくだけあって被害額の算定は難しい。それゆえか、この特約も、カバーできる上限は1千万円となっている。

週刊新潮 2021年2月11日号掲載

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