「青天を衝け」渋沢栄一を演じる吉沢亮の素顔 関係者は「自分を飾ろうとしないタイプ」

エンタメ 芸能 2021年2月13日掲載

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 日本の資本主義の父、渋沢栄一を主人公とするNHKの新大河ドラマ「青天を衝け」が14日に始まる。渋沢を演じるのは吉沢亮(27)。大河には初出演で初主演。放送開始を前にその実像に迫りたい。

「自分を良く見せようとしない」

「シャイな役者さんです。自分を主張するタイプではない。前へ前へと出るような、ガツガツしたタイプではありません」

 吉沢をそう評するのは、映画「僕が処刑される未来」(2012年)と同「赤々煉恋」(13年)で仕事を共にした小中和哉監督(58)である。

 映画、ドラマ関係者やファンなら知る通り、吉沢は悪評めいたものがない。その理由は、人を蹴落とすタイプではないからでもあるだろう。

 撮影現場でも受けが良い。

「自分を良く見せようとしないからで、だから信用されるんじゃないでしょうか。自分を飾ろうとしないタイプ。正直です。自分をどう見せるかより、自分が映画にどう貢献できるか、映画のためにどうあるべきかを考えることが出来てきていると思いました」(小中監督)

 渋沢も裏表がないまっすぐな男だったと言い伝えられている。「青天を衝け」でもそんな男として描かれるので吉沢にはハマリ役かも知れない。

 渋沢は1840年、武蔵国棒沢郡新島(現在の埼玉県深谷市)に生まれたが、吉沢は1994年に東京で誕生した。男ばかり4人兄弟の次男。2歳年上の兄、3歳と7歳年下の弟がいる。

 小学校1年生から中学校3年生までの9年間は剣道に打ち込み、2段の腕前。15歳だった2009年に、母親が現在の所属事務所の全国オーディションに応募し、入賞する。兄弟4人の中で一番イケメンなのが吉沢なのだそうだ。

 翌10年には舞台「BLACK PEARL」に出演し、役者デビュー。11年には特撮ドラマ「仮面ライダーフォーゼ」(テレビ朝日)で仮面ライダーメテオに変身する高校生・朔田流星に扮する。役者人生は振り出しから順調だった。だが……。

「もともと強く憧れて入った世界ではなく、最初は一生続ける仕事ではないと思っていたんです。でも、19歳のときに初めて主演をやらせていただき、今までにない責任の重さや、作品を面白くしたいという気持ちを強く感じて、役者としての意識が芽生えたように思います」(吉沢*1)

 その主演作とはTBSドラマ「ぶっせん」(2013年)。貧乏寺が資金繰りのために開いた仏教専門学園を舞台とするコメディで、生徒役だった。16年には「サマーソング」で映画でも初主演。こちらはサーフィンが好きな若者役である。

 デビュー以来、ずっと出演依頼が途絶えず、2018年には8本の映画と2本の連ドラに出た。どうスケジュールを調整したのか不思議なくらいだ。本人も「正直スケジュール的には地獄だったんですけど(笑)」(吉沢*2)と振り返っている。

 どうして売れっ子なのだろう。

「吉沢さんの魅力は『令和の和製アラン・ドロン』と呼ばれるほどのマスクと演技力。マスクにばかり目が向きがちですが、2019年の映画『キングダム』では奴隷の漂と秦国の王であるエイ政の2役を見事に演じ分け、主演の山崎賢人さんを完全に食ってしまい、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を得ました」(映画ライター)

 特にダークな部分のある人物役をやらせたら、若手でダントツなのだそうだ。

「2018年の『リバーズ・エッジ』でのいじめられっこ役とか、2020年の『AWAKE』で演じた、棋士になれなかった無念の思いから将棋ソフトのプログラミングに打ち込む主人公とかですね。『リバーズ・エッジ』の演技では日本アカデミー賞新人賞を獲りました」(同・映画ライター)

 吉沢自身も冗談交じりにこう語ったことがある。

「闇を抱えたキャラクターは演じていて楽しいです。僕自身、明るいか暗いかでいったら暗い人間なんで(笑)」(吉沢*3)

 だからといって陽性の演技が不得手なわけではない。前出の小中監督はこう評する。

「幅広い役をやれるようになったと思います」

 昨年も主演の「青くて痛くて脆い」など4本の映画に出演した。ドラマは「半沢直樹スピンオフ企画 狙われた半沢直樹のパスワード」(TBS)と連ドラ版「半沢直樹」の第3話だ。どちらも天才的プログラマー・高坂圭役だった。

 映画や若者向けのドラマは見ないという向きでも「半沢直樹」はご覧になったのではないか。

 見た人は少なからず「大柄ではない」という印象を抱いたはず。実際、171センチで、高身長化が進む役者の中では大きいほうではない。もっとも、これは渋沢役を演じるに当たっては好都合と言えそう。

「渋沢は150センチと小柄だったんです。それが人格形成に影響したと言われています。知力で人の上に立とうとしたのです」(同・映画ライター)

 また、渋沢の家は豪農で武家ではないが、尊王攘夷の志士たちと思いを共有したこともあり、竹刀を振るシーンも予定されている。剣道2段が活かされるのは言うまでもない。

 27歳での大河主演を「早いのではないか」「若すぎる」と指摘する声もある。吉沢本人も2019年9月に作品概要と主演が発表された際、会見でこう語った。

「大河の主演を務めた役者は名実ともにトップクラス。ものすごく光栄だと思う半面、プレッシャーも尋常じゃないぐらいで、不安はあるが、精いっぱい頑張りたい」

 だが、実際のところ27歳は若くないのだ。振り返ると、2001年の「北条時宗」に主演した和泉元彌(46)は放送開始時に26歳。03年の「武蔵 MUSASHI」に主演した市川新之助(現・市川海老蔵、43)は同25歳。05年の「義経」に主演した滝沢秀明(38)は同22歳。08年の「篤姫」に主演した宮崎あおい(35)も同22歳だったのである。

「『青天を衝け』を成功させたら、1987年の大河『独眼竜政宗』に27歳(放送開始時)で主演した渡辺謙さんのような大物役者になれるのではないかと言われ始めています」(同・映画ライター)

 さて、悪評がない男と書いたが、令和版和製アラン・ドロンとも呼ばれながら、熱愛報道も一度としてない。記者やカメラマンが張り込んでも追い掛けても何にも出てこない。仕事一途なのかガードが盤石なのか……。

参考文献
*1 婦人公論 2020年11月24日号
*2 Cut 2020年1月号
*3 ELLE JAPON2020年10月号

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集