綾瀬はるかと高橋一生が入れ替わるドラマのような「入れ替わりの元祖」を追え!

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入れ替わりドラマ5作品

 過去、私が観た限りで新奇性を感じた入れ替わりドラマは5作品。

●「ぼくの魔法使い」(日テレ・2003年)

 賢くない若妻(篠原涼子)と、記憶術で手広く商売を広げた実業家(古田新太)が自転車で正面衝突。

 篠原が何かを思い出そうとするときのみ古田に変わってしまうという「シチュエーション限定入れ替わり」。

 前半では、古田の体は入れ替わり時に気絶し、篠原にはならないという「半・入れ替わり」だった。

●ドン★キホーテ(日テレ・2011年)

 児童相談所勤務の気弱な青年(松田翔太)と、ヤクザの武闘派組長(高橋克実)がなぜか入れ替わる。

 境遇もタイプも真逆の男が入れ替わる面白さ、もたらす化学反応は意外とよき方向へ。

 公務員もヤクザも、人としての在り方は同じ。混乱するドタバタよりも予想外のフィット感、割れ鍋に綴じ蓋感が。

●さよなら私(NHK・2014年)

 高校時代の女友達同士が階段落ちで入れ替わるが、実は妻と愛人だったとわかる、精神的に最もキツイ入れ替わりだ。

 妻で専業主婦を演じるのは永作博美。愛人は映画プロデューサーの石田ゆり子。

 妻と愛人が入れ替わるという地獄を体験したのが夫の藤木直人。かなりの問題作だった。

●ぼくは麻理のなか(FOD・2017年)

 男子大学生(吉沢亮)と女子高生(池田エライザ)が入れ替わったと思いきや……という物語だが、最もひねりのきいた変化球。

 想像を超えるというか別ベクトルに向かう結末は新しかった。ちょっと精神医学の話でもあり。

●宇宙を駆けるよだか(Netflix・2018)

 裕福な家庭に育ち、クラスで人気の女子(清原果耶)と、愛情希薄な母とふたりで暮らす、陰気で太っている女子(富田望生)が入れ替わる残酷な物語。

 入れ替わりの条件がかなり厳しく限定されていて、元に戻れる可能性が絶望的に低い。

 若手女優ふたりがそれぞれを見事に演じ分けた密かな名作。

 今後は、入れ替わる人物や方法だけでなく、入れ替わりがもたらすモノが重要だ。

 もちろん、性差を認識する配慮の育成という一面もあってしかり。

 立場や目的が異なる人間と入れ替わることで、もっと優しい世の中・多様性を認めあう世の中を目指すのもありだ。

 ま、日本は相変わらず女を差別する粗大ごみが君臨する、ジェンダーギャップ大国だからな。

 自らのファンタジーアレルギーは抑えつつ、作り手のプライドと心意気を感じる「入れ替わり」モノに期待します。

 そうそう、「タイムスリップ」と「記憶喪失」の元祖は……誰か調べてよ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

デイリー新潮取材班編集

2021年2月12日掲載

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