失政で消えた「コロナワクチン」6千万人分 河野太郎をワクチン担当相に据えた背景とは

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最終契約を結ばないまま

 それでも、FNNの最新世論調査では、「緊急事態宣言を出す必要がなかった」と答えた人は3・3%にすぎない。冷静になるにはワクチンが必要なようで、同じ調査でも、「ワクチンに期待する」という人は77・2%におよんだ。ところが、ワクチンをめぐっては政府内に軋轢が生じていた。

 1月20日、田村憲久厚労相は米ファイザー社が開発したワクチンについて、年内に約7200万人分の供給を受けることで「正式に契約した」と発表した。報じた記事には、〈厚労省が同社と昨年7月に結んだ基本合意では、今年6月末までに6千万人分を供給するとしていたが、契約では年内となり、数量が増えた〉とあったが、微妙な変更はどうして生じたのか。政府関係者が解説する。

「厚労省はファイザーの日本法人と、6月までに6千万人分のワクチンを供給してもらうことで、基本合意していた。ところが、薬害エイズで課長が起訴されたのがトラウマの厚労省は、ファイザーと最終契約を結んでおらず、その間に、日本への供給分は米国に回されてしまった。つまり6千万人分が〈6月末までに〉間に合わないことになっていたのです。慌てた官邸はファイザーの米国本社と交渉し、最終契約を結びましたが、供給時期は〈年内〉となって、五輪に間に合うかわからない。菅総理は大激怒し、河野太郎行革担当相をワクチン担当に据えたのです」

 ところが、お世辞にも調整が上手いとはいえない河野大臣は20日、厚労省の発表を受けた「接種の開始は5月ごろ」という報道をやり玉に挙げ、〈勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ!〉とツイッターに投稿。22日にも会見で「修正させていただく」と述べた。

 修正の対象は、坂井学官房副長官の「6月までに接種対象となるすべての国民に必要な数量の確保は見込んでいる」という発言だった。一方、坂井氏も「修正しません」と応じたのだ。

「6月までの確保を“見込む”を“めざす”にすることで落ち着きましたが、ワクチン接種の日程管理で主導権を握りたい河野大臣の思惑が働いた恰好です。もちろん、五輪前にワクチンが国民に行き渡らない可能性を懸念する、菅総理のいら立ちが影響していると考えられます」(同)

 大切なのは国民の不安を煽ることではなく、安心に結びつけることだろう。

 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、

「滞りなく供給してもらえるとありがたい」

 と希望を述べ、続ける。

「新型コロナのワクチンは予防効果も予想以上で、アナフィラキシーなどの副反応も、一般的なワクチンとくらべて多いわけではない。有効性も安全性も高く評価しています。一方、周囲の医療従事者に聞くと、40歳未満の若い医師や看護師には、周囲の様子や結果を見たいという慎重な人もいた。理由の一つは、各人のアレルギー反応や副反応への心配。もう一つは、医療従事者に万一、副反応が出たとき、病院の機能が低下することへの心配です」

 実際、感染拡大が深刻なアメリカでも、医療関係者の4分の1は、ワクチン接種に後ろ向きだという。それでも寺嶋教授が、多くの医療従事者が接種したほうがいいと説く理由は、

「一つは感染対策。ケガや手術で入院される方のなかに、症状はないのに思いがけずコロナに感染している人がいて、そこから医療従事者が感染し、ほかの患者さんに広めてしまう、という事例を予防し、病院の機能ダウンを防げます。二つ目は、不安の解消につながるから。医療従事者、高齢者、持病がある人の順に接種予定ですが、やはり身近な人が接種し、副反応が想定内で、はじめて実感が湧くと思います。また、ワクチンの保存から接種までのオペレーションが混乱なく進んでいれば、心配は払拭されると思うのです」

永久に続けるのか

 浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師は、

「昔、打つと牛になると言って、天然痘の種痘を拒んだ人がいたそうですが、ワクチンの副反応への心配は、それに近いかもしれない」

 と指摘。そのうえでワクチンへの期待を述べる。

「私は、新型コロナは将来、風邪の一種になると言ってきましたが、ワクチンはその状況が訪れるのを早めてくれると思います。高齢者の重症化、死亡を防げるはずのワクチンを打たないという選択はしないでほしい。我々も新型コロナの患者を懸命に診ていますが、状況は厳しい。ずっと続けるのは難しいから、ワクチンを普及させ、早く普通の風邪にしてほしいのです」

 河野大臣はウイルスの真似をしている場合ではないのだ。しかし、普通の風邪になる前に自殺者がさらに増えても、本末転倒だ。免疫学が専門の順天堂大学特任教授、奥村康氏は、

「日本など東アジアの人は、新型コロナへの集団免疫がある程度できていると思う。それでも亡くなる人を守るのに、ワクチンには重要な役割があると思います」

 と述べ、あえて言う。

「コロナで1日に数十人亡くなったと大騒ぎする一方、肺炎で亡くなる人は毎日何百人もいる。少し離れて眺めれば、コロナで亡くなる人は、日本ではそれほどの数字ではありません」

 事実、昨年1~8月に肺炎で亡くなった人は5万3306人におよぶ。しかし、2019年の同時期は6万4083人。コロナ対策の成果か、逆に減っているのだ。東京大学名誉教授で食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏が指摘する。

「毎年、日本では約140万人が亡くなりますが、昨年の死亡者数は10月までの統計では、一昨年よりむしろ少ない。コロナが日本の死亡率を上げたという事実はありません。インフルエンザでは毎年1万人が亡くなりますが、コロナでは5千人が亡くなると対策費を何十兆円も投じ、社会が大混乱する規制をかける。結果、インフルの死者が今季はほぼゼロ。衛生対策を頑張った結果で、それ自体はすばらしいですが、仮にコロナを克服しても、マスク着用や会食自粛、海外渡航制限などを続けなければ、またインフルで1万人が亡くなる。コロナでの5千人で大騒ぎする人たちは、永久にこの対策を続けないと筋が通りません」

 続けた結果、失業者があふれ、自殺者が増加し、感染者への偏見と差別が増す。コロナを恐れすぎるあまり、そんなおかしな社会にしてはならない、ということを肝に銘じつつ、医療従事者と高齢者、基礎疾患がある人たちへのワクチン接種を待ちたいものである。

週刊新潮 2021年2月4日号掲載

特集「失政で消えた『コロナワクチン6000万人分』」より

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