白い恋人、萩の月、東京ばな奈…コロナで苦境に陥る「お土産」お菓子の生き残り策は?

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 1月8日に発令された緊急事態宣言は、3月7日まで延長されることが決まった。コロナ禍をうけての旅行・出張自粛は、まだ続くことになりそうだ。長引く「お土産」需要の減に、各社はどう、立ち向かっているのか――。

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 先月中旬、静岡・浜松の定番お土産「うなぎパイ」(春華堂)の減産が報じられた。当初は前年比で5割減としていたが、のちに4割減へと“下方修正”。工場や直営店舗の営業日を減らし対応するという。

「うなぎパイ」と同様、北海道の「白い恋人」(石屋製菓)も、昨年は一時的に生産ラインを停止。現在の売り上げは前年同期の半分に落ち込んでいる。国内の需要減を受けて、現在は、同店初の海外出店を計画中であることも報じられた。

「これまで『白い恋人』は”道外不出”とされ、全国にある直営店舗でも販売されていませんでした。北海道でしか買えないという希少性ブランディングを40年余りに続け、現在の地位を築いてきたのです。ところが1月末まで、東京・北千住のマルイで期間限定で販売していました。同様に、これまで首都圏でしか販売されていなかった『東京ばな奈』(グレープストーン)も、昨年4月の大阪を皮切りに、全国で期間限定の“出張営業”を続けています。1月下旬には、ついに四国に“初上陸”しました」

 と解説するのは、流通アナリストの渡辺広明氏である。ただし「白い恋人」「東京ばな奈」ともに、

「『白い恋人』はこの2月より、森永乳業と組んだ『サンドアイス』と『チョコレートドリンク』商品を販売します(※前者はコンビニで先行販売、3月1日より全国販売)。『東京ばな奈』もポケモンとコラボし、この1月には第1段の『ピカチュウ』に続く『イーブイ東京ばな奈』をセブン-イレブンで展開していました。また、JR東京駅の特別店舗で販売していたディズニーとのコラボ商品も、2月14日までの限定で、全国通販で取り扱いをスタートさせました。ともに販路を拡大させたわけです。ポイントは、どちらもメインである看板商品ではなく、変化球の商品を売っているということでしょう。看板商品の希少性を維持したいということでしょう」

あのお菓子も通販解禁

 いわずもがな、お土産は「その土地でしか買えない」ことに価値がある。一方で、ネット通販が当たり前になった現在では、全国の需要に答えれば、確実に売り上げが伸びる。販売元としては悩ましいところだろう。

「かねてからあったそうした葛藤が、コロナ禍の苦境で、決断を迫られたということでしょう。しかもお土産は『人から貰うもの』であることが多く、自宅で食べるために買う人は少ない。『白い恋人』や『東京ばな奈』のような、フレーバーやデザイン性で応用がきくお菓子ならば“流通用”の商品を別に用意できますが、必ずしもそういう商品ばかりではありません。そうした中、昨年5月から仙台銘菓の『萩の月』(菓匠三全)がオンライン販売に踏み切りました。コロナ禍が落ち着くまでの期間限定としてはいますが、販売元は対面販売を重視してきたといいますから、苦渋の決断だったはずです。また、これは大手ですが、カルビーも北海道でしか買えなかった『じゃがポックル』のネット販売を一時的に解禁しています。一方、私が故郷の『うなぎパイ』は割れやすいためか、ネット販売は難しいようです」

 生ものも同様だろう。伊勢名物の「赤福餅」(赤福)は、現時点で北海道から大分まで、10以上の百貨店への期間限定出店販売を予定している。コロナ禍以前にも駅弁イベントなどには出店してきたが、今年の出店回数は以前より増加傾向だ。

「お土産としてのブランド力の低下の心配はありますが、一方で、『萩の月』のネット解禁はSNSでも話題になり、評判も良かった。定番化しているお土産のお菓子には、多くの固定客がいます。食べて応援、のような形で取り寄せて自宅で楽しむ、新しいお土産の形が生まれている感じがしますね」

 コロナ禍が落ち着いた暁には、ぜひ、現地でお土産を買いたいものである。

デイリー新潮取材班

2021年2月3日掲載

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