「バイデンから電話が来ない」と気を揉む韓国人 原因は「習近平コール」か、それとも――

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2021年2月2日掲載

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「バイデン(Joe Biden)新大統領から電話が来ない」と韓国人が焦る。日米首脳は電話協議を終えたのに、それから5日たっても文在寅(ムン・ジェイン)大統領には音沙汰がないからだ。韓国観察者の鈴置高史氏は「電話協議の遅れ」に米韓の亀裂を見る。

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「韓国の方が上なのに」

鈴置:日本時間1月28日未明、バイデン大統領と菅義偉首相が電話で話し合いました。米国が新政権になって初の首脳協議で、日米は同盟強化を謳いました。ところが米韓首脳の電話協議は2月2日の午前になっても実現しない。韓国では「軽んじられた」と騒ぎになっています。

――「まず日本、次に韓国」が慣例では?

鈴置:それはそうなのですが、韓国では「我が国は日本よりも上の存在になった」との気分が横溢している。「米国は日本よりも先に韓国に電話すべきだ」と考える人が増えているのです。

 日米首脳の電話協議の前から毎日経済新聞は、米新政権の国務長官や国防長官が韓国よりも先に、日本のカウンターパートに電話したことを問題視していました。

 見出しの「『なぜ、日本の次に韓国なのか』…バイデン政権は異なると思っていたのに」(1月27日、韓国語版)からも分かるように、そろそろ我が国が先になるはずだ、という期待が韓国で高まっていたのです。

 そんな中、肝心の大統領までが「日本・ファースト」を実行した。国務長官と国防長官は「日本が先」とはいっても韓国にも同じ日か翌日には電話してきた。それなのにバイデン大統領からは5日たっても電話がない。韓国人はいたくメンツを傷つけられたのです。

 日米首脳協議の発表直後に青瓦台(大統領府)は「順番に意味はない。内容が重要」と記者に説明しました。「韓国は後回し」と国民の不満が高まるのを恐れ、予防線を張ったつもりだったのでしょう。

 でも、その言い訳が怒りに油を注ぎました。「酸っぱいブドウの論理だ」「もし韓国が日本よりも先だったら、大騒ぎしてブリーフィングしたであろうに」といった批判がネット上で盛り上がりました。

「順番は無意味」を報じた記事、例えば東亜日報の「日本とまず電話したバイデン…青瓦台は『順番に大きな意味無し』」(1月28日、韓国語版)の書き込み欄で、そんな怒りの声を読むことができます。

割り込んできた習近平

――そこまで怒らなくてもいいような気がします。

鈴置:確かに、これまでも「日米」が「米韓」よりも先だったのですから。ただ、韓国人の怒りには伏線があったのです。

 文在寅大統領は1月26日夜9時から40分間、習近平主席と電話で協議しました。中国の要求に応じたものでした。韓国が米国の新大統領との電話協議を待っている隙に、中国が強引に割り込んだ形です。

「韓国は米国よりも中国に近いと世界に見せつける狙いであり、韓国はそれに応えたと見なされる」との懸念を中央日報は社説で表明しました。「米中覇権競争の中で問われる韓国外交」(1月28日、日本語版)です。

 さらに、この電話協議で文在寅大統領が習近平主席に「中国共産党創建100周年をお祝いする」「中国の国際的な地位と影響力は日増しに高まっている」と語ったことも明らかになりました。

 韓国側は隠していたのですが、中国側がこの発言を公表したのです。中国外交部の発表(英語版)で読めます。

 中国共産党によるウイグル、チベット、香港などでの人権弾圧が西側で非難を浴びている時に、「お祝い」を述べるのは異様です。

 朝鮮日報は社説「文が中国共産党を称賛、中国海軍は我が西海を連日圧迫」(1月28日、韓国語版)で以下のように嘆きました。

・中国共産党創建日を6か月も前にして「心からのお祝い」を伝え習近平を褒め称えるのは、世界の民主主義国家の指導者の中で文大統領が唯一であろう。
・中国の人権蹂躙と香港の民主化デモへの弾圧以降、世界で中国共産党体制への警戒心が高まっている時なのだ。
・ましてや、バイデン政権がトランプの政策のうち唯一継承するのが「中国圧迫」である。安保協力機構としては米日豪印に韓国を加えた「Quadプラス」を、経済協力システムとしては米国を中心としたサプライ・チェーン網などを構想中である。
・このような韓国を米国はどんな目で見るだろうか。信頼すべき同盟と言えるのか。米国なくして北朝鮮の核ミサイルをただの1発も防げないのだ。

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