「東京五輪」、再延期はあり得ない、招致活動を行った元都庁担当者が出した“答え”は?

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 英タイムズ紙が1月21日、与党幹部の話として、「今年の五輪開催を中止、2032年開催プランが水面下で進行している」と報じた。日本政府はこれを真っ向から否定し、小池百合子都知事もこの報道に「抗議すべき」と語った。しかし、世論調査を見る限り、中止や再延期を望む声が高まっているのは事実である。そこで、専門家に今後の見通しを聞いた。

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 NHKが昨年12月中旬に行った世論調査では、五輪を「開催すべき」が27%、「中止すべき」が32%、「さらに延期すべき」が31%だった。ところが、1月9日から3日間行った調査では、「開催すべき」が16%、「中止すべき」が38%、「さらに延期すべき」が39%と、中止や延期を望む人が増えているのだ。

 ソウル五輪の柔道銅メダリストで日本オリンピック委員会(JOC)理事の山口香氏は、毎日新聞(1月20日付)の取材に対して、

《再延期にはコストもかかる。今回はやるか、やらないかの選択だと思う。選手も疑心暗鬼になっており、中ぶらりんの状態を長引かせないでほしい》

 と語った。が、専門家はどう見ているのか。

「東京五輪再延期の可能性はゼロと言っていいでしょう」

 と断言するのは、都庁で東京五輪の招致推進担当課長を務め、現在は国士舘大学法学部客員教授の鈴木知幸氏である。

2032年はインド

「タイムズは、2032年再延期を報じていますが、実は、32年の五輪は、インドがすでに国際オリンピック委員会(IOC)に立候補をアピールしており、関連書類も提出済みです。大国の中で、五輪を開催していないのはインドだけですから、IOCとしても、是非ともやらせたい。現実的な話として、32年の再延期はありません」

 この他、1年延期や、2024年に延期という説もあるが、

「2021年の夏に福岡で行われる予定だった世界水泳選手権、同じくアメリカで行われる予定だった世界陸上競技選手権を、いずれも22年に延期してもらっているのです。国際水連や世界陸連はIOCの構成メンバーですから、五輪を優先してくれたわけですが、さらに1年延期してもらうことは流石に無理でしょう」(同)

 さらに、

「24年はパリ、28年はロサンゼルスで開催することが決定しています。日本が五輪を延期するために、パリやロスに開催を延期してもらうことはまず不可能です」(同)

 延期はナシとなると、今年やるか、中止するかの選択になる。

「IOCのバッハ会長は、一貫して今年開催すると話しています。彼が考えているのは、無観客での実施です。ただし、無観客で開催すれば、900億円のチケット収入がゼロになってしまいます。そのためIOCから大会組織委員会に無観客でやれとは言いづらいのです。とはいえ、IOCには、放映権料が入るので、無観客で開催しても痛くも痒くもない。コロナ禍で無観客でも開催すれば視聴率が上がる。それに連動して放映権料が増える。IOCの本音は、組織委員会に早く無観客で実施すると決断してもらいたいのでしょう」(同)

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