二階俊博、韓国諜報機関トップと「兄弟の契り」 権力を受け継ぐのは三男?

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 秦の始皇帝、豊臣秀吉、今太閤の田中角栄。往時絶大なる権力を誇った稀代の為政者たちも、盛者必衰の理(ことわり)に逆らうことができず晩節を汚した。自民党歴代最長幹事長、二階俊博(81)。我が世の春を謳歌する令和のドン。祇園精舎の鐘の声、二階の耳にはいかに響く。

 ***

「どもども、お世話になりまーす」

 漂ってくるノリの良さ、あるいはそこはかとない軽さ、または胡散臭(うさんくさ)さ。

〈乱交パーティー「女衒(ぜげん)芸能プロ社長」の正体〉(「FOCUS」1999年7月21日号)

 かつてこう報じられた男が語り始める。

「二階さんは俺に政治との関係をイロハから教えてくれた、ある意味でオヤジみたいな人。付き合いはもう16~17年くらいになるかな。変な話、今いる二階派の議員より、俺のほうが付き合いは長いですよ」

「歴代最長幹事長」との仲を誇るこの男の名は矢島義也、59歳。昔はタレントを抱えるプロダクションの社長で矢島義成と名乗っていたが、現在は義也に変身し、政治系シンクタンク「大樹グループ」の会長に転身。またの名、令和の政商。

 2018年6月、衆院議員の細野豪志は当局に狙われていた。その前年10月の選挙期間中に「JC証券」から受け取った5千万円は、選挙のための裏金だったのではないか。総理候補と持て囃されたこともある細野のスキャンダルに新聞各紙は沸き、競うように記事を掲載する。

 その疑惑の会社であるJC証券の親会社と大樹には浅からぬ関係があった。親会社は太陽光事業などを手掛ける名目で投資家から200億円もの金を集めたものの事業は頓挫し、投資被害が発生。そして親会社から大樹側に業務委託費など5億円が支払われていた。

 繋がりかかる点と線。細野スキャンダルに矢島が噛んでいる可能性はないか。東京地検特捜部の動きに新聞記者たちは目を光らせる。結局、記者たちが流した汗は徒労に終わるが、JC証券は金融庁から証券会社の登録を取り消される。

 二階は、そんな矢島の「オヤジ」だった。

 なお細野は、JC証券疑惑が報じられた翌年の1月、二階派に入会している。

 15年11月、1100人を引き連れインドネシアを訪れた二階に矢島は同行。ふたりは現地でともに盃を乾(ほ)している(掲載の写真参照)。

 16年5月、矢島の「結婚を祝う会」で乾杯の音頭を取ったのも二階だった。

 17年7月、千葉県にある大樹グループの迎賓館「大樹庵」で行われた、「世界津波の日」記念碑の除幕式。二階が制定に尽力した世界津波の日。それを祝して矢島が建立した碑、すなわち二階の「偉業」を讃(たた)える碑の除幕式に、二階は側近議員を伴い駆け付けた。

 最初に矢島と政界の媒介役を果たしたのは元労働相の山口敏夫。「珍念」の異名で知られ、詐欺共犯などの容疑で逮捕歴のある男の導きで矢島は永田町に食い込み、二階にも辿り着く。その後、挨拶する程度だった関係の菅義偉と二階のふたりを、会食させることによって繋いだのも矢島である。

「二階さんには頭が上がらない」

「元女衒芸能プロ社長」にこう言わしめる二階。今、政界で二階ほど来る者は拒まず誰でも受け入れる融通無碍な男はいない。そして、近しい人は彼のその特質を「懐が深い」と意訳するが、懐の先に隠された二階の「心」に辿り着いた者もまたいない。

「何を考えているのか分からない」(元運輸相の亀井静香)男、二階俊博。

 しかし矢島をも手なずけるその融通無碍さは、時に自身に向かう刃となって返ってくることがある――。

「秘書が…」

 吉川貴盛、西川公也、河井案里。いずれも東京地検特捜部案件で新聞を賑わせ続けている二階派の面々。目下、二階の派閥は醜聞の宝庫と化している。

 先人は言う。

「蛙の子は蛙」

 つまり、この親分にしてこの子分あり。

 二階その人も、必ずしもこれまで「塀」のあちら側が遥か遠くに霞んでいたというわけではない。

 13年12月、二階の元政策秘書を偲ぶ会が開かれる。だが、そこにあるべき人の姿がない。会場に参集した永田町雀たちが囁(ささや)き合う。

「未亡人はどうした」

 その4年前、二階の政策秘書は東京地検特捜部に政治資金規正法違反(虚偽記載など)で略式起訴され、罰金100万円の略式命令を受ける。

 剛腕・小沢一郎との関係が取り沙汰されていた「西松建設マネー」。それが二階にも波及した。二階が代表を務める自民党和歌山県第3選挙区支部の収支報告書に、西松からの企業献金を西松社員らの個人献金であると偽って記載されていたことが発覚する。

 当時、二階はこうコメントした。

「(政策)秘書がやや軽率であったんではないかと思います」

「(秘書は)我々と苦楽をともにし、一緒にやってきた家族同様の者でもあります。以後、こういうことのないようにしたい」

「秘書から、西松建設の金だとは全く聞いておりません。だから私は知りませんでした」

 昭和の時代から令和の「桜を見る会」安倍晋三まで受け継がれる永田町の伝統芸、「秘書が……」。この時、二階もそれを踏襲したが、罪を背負って生涯を閉じ、「家族同様」だったはずの元政策秘書の未亡人の姿が偲ぶ会になかった。

「未亡人は二階さんを恨んでいるのではないか」

 そんな憶測が飛ぶ。

 彼女は亡夫を咎人(とがにん)にした二階にいかなる思いを抱いているのか。

「主人の仕事のことは分かりませんから、(二階)事務所に訊(き)いてください」

 未だにその口ぶりは歯切れが悪い。

 12年、今度は複数のメディアが「特許庁疑惑」を報じる。東芝の100%子会社「東芝ソリューション」が、特許庁の新特許事業のシステム設計を落札。しかし、約24億円の公金が注ぎ込まれた挙句、システム開発は東芝ソリューションの手には負えないことが判明し、事業は立ち消えとなる。

 なぜ、そんな杜撰な落札が罷(まか)り通ったのか。特許庁は経産省の所管。二階は元経産相。東京地検特捜部は二階に疑いの目を向ける。

「そんなこと、私は知らない」(「週刊朝日」12年10月19日号)

 一連の疑惑に対し、二階はこう答えて今に至る。

 そして現在、二階は親分である自身の背中を見て育った子分議員の醜聞に悩む。

 1月15日、元農水相の吉川貴盛が鶏卵大手「アキタフーズ」疑惑を巡り収賄罪で在宅起訴された。

 幹事長代理として常に二階に寄り添う側近中の側近、林幹雄(もとお)が吐露する。

「(二階派議員のスキャンダルが)多いと言えば多いかもしれん。それはまあ、言ったところで仕方ないよ。私が傍(そば)で見ていると、顔や口には出しませんが、そりゃ二階さんも(スキャンダル多発を)気にしている雰囲気は感じとれます。まあ議員それぞれで、大人の対応をしなさいというのが二階さんの考え方です」

「数は力」を体現したのと引き換えに、子分の乱行を抱え込んだ二階。

「製造者責任」

 歴代最長幹事長にこの言葉が重くのしかかる。

 そして現下、「子分」と同時に「子」の行く末が二階の胸に去来する。

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