コロナ禍で「郊外戸建て」に引っ越すのは成功?、失敗? 木更津、三島に移住した人々の声

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阿佐ヶ谷から木更津へ

 こうした「集合住宅から戸建て」という需要の変化は「都心から郊外」につながっていく。都心のIT企業に勤める梨田憲一さん(仮名・34歳)は最近、東京・杉並区から千葉県木更津市に引っ越した。

「ウチの会社では、リモートワークが今後も継続することとなり、出勤は基本週2回でよくなった。だったら、高い家賃を払って東京にいなくてもいいと思って、引っ越しを決めました。これまでは阿佐ヶ谷の月12万円の2DKに、妻と2歳の子の3人暮らしだったのですが、家で仕事するなら書斎も必要になってきます。そこで見つけたのは、築25年、130平米の2階建ての、家賃7万5千円の中古戸建てです。内見時に子供が楽しそうに庭で走り回ったことが決め手でした。ちなみに、うちの子の保育園には、私たち家族のように都心から移住してきたという家の子供が少なくともほかに2世帯いますよ」

 実は木更津は都心へのアクセスも悪くないという。

「最寄りの君津駅までは徒歩15分なのですが、そこから職場の東京駅までは特急で1時間。高速バスに乗れば新宿や羽田空港にも直通です。以前は、20分ちょっと満員電車に揺られて通勤していましたが、特急電車や高速バスなら必ず座れて仕事もできる。ストレスの低さは段違いですよ。駐車場もついているので、50万円くらいの中古車を買ったとしても、以前より生活コストは断然低い。今の家は5年間の定期借家なのですが、それまでにこの付近で一戸建てを購入するつもりです。条件としては、子供とキャッチボールできて、家庭菜園も楽しめるくらいの庭があれば。東京では夢みたいな話ですが、ここならわりと簡単に実現が可能です」

5LDKで360万円

 筆者が梨田さんの住む君津駅周辺で中古戸建てを検索したところ、駅から徒歩11分、築40年、土地面積200平米の2階建て4LDKが400万円という破格の値段で出ていた。さらに、駅から徒歩20分を覚悟すれば、築35年、土地面積240平米2階建ての5LDKで、360万円という物件もあった。

 木更津市南部の農業エリアでは、不動産業者の動きがにわかに活発化しているとの情報も。地場の不動産業者は言う。

「緊急事態宣言が明けたくらいから、都内から物件の買いつけに来た不動産業者を見かけるようになった。古い空き家の家主を捜して、周辺住民に聞き込みをしている。ターゲットは、広めの庭や耕作地がついているような物件。この辺の古い空き家なんて今までは買い手がつかなかったのに、修繕したのちにリノベーション物件として売り出すらしい。『適切に管理されていない空き家は今後、空き家対策特別措置法が適用されて固定資産税が6倍になります』なんて言って、家主を脅して安く買い叩こうとする輩もいるみたいです」

 しかし、飲食店もコンビニも徒歩圏になく、言葉は悪いがこんな辺鄙な農村の住宅に、需要はあるのだろうか。

「このあたりは築50~60年以上の物件もザラで、すぐに住めるような中古戸建てはタマ数が少なく、条件通りの物件が見つかることはほとんどない。『となりのトトロ』にあこがれたような子連れの夫婦が物件を探しに来ることがありますが、仮に条件は合致しても、いざ物件を内覧したら、だいたいあまりのオンボロさに青ざめて帰っていく(笑)。都会のマンション育ちの人には、修繕しながら住むっていう発想はないのかな。だから、修繕済みにして、若い人が好む間取りに変えたりすれば、需要はあるでしょう。木更津エリアで住宅費を抑えることを考えるなら、賃貸より購入してしまったほうがお得。この辺は都会に比べて賃貸市場の流動性が低く、空室期間も長くなる傾向にあるので、賃料は物件の価値に対して高めに設定されている」

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