養老孟司、愛猫「まる」の死について語る 今でも守る習慣…「もうそんなことする必要ないのに」

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「恩知らずのバカ」

 12月22日、一匹の猫の訃報が全国ニュースとして流れた。名前は「まる」。『バカの壁』(新潮社)等で知られる解剖学者、養老孟司さん(83)の愛猫である。まるはしばしば、養老さんと共にドキュメンタリー番組等にも出演し、写真集まで発売された人気者。そんな「まる」との思い出について養老さんに語って頂いた。

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 書籍や写真集3冊、D V D1点、テレビ番組としては10回以上(1月29日にはNHKBSプレミアムにて『まいにち 養老先生、ときどき まる』冬編が放送予定)、と、猫の世界のアイドルだったと言えるだろう。。「全体的に丸いから『まる』と名付けた」、というのはすでにファンの間では有名な話だ。

 猫としてはかなりずんぐりむっくりした体形で、動きはお世辞にも俊敏とはいえない。編集者との打ち合わせの最中、のろのろと割り込んでくることも珍しくなかったようだ。

 まるの猫種はスコティッシュフォールド。養老さんに思考の材料を提供する存在でもあった。最近の著作『遺言。』の第1章は、まるにインスピレーションを受けた話から始まるのだ。

「家にいるときは、私がかならずまるに餌をやる。まるも心得ていて、私の顔を見ると、腹がすいていれば、かならず餌をねだる。だから餌をやる。問題はそのあとである。食べ終わると、『ごちそうさま』の一言もない。フンと横を向いて、外に出て行ってしまう。台所の戸が開いていないと、ガリガリひっかく。だから私が開けてやる。それでも『ありがとう』と言ったことは一度もない。恩知らずのバカめが」(『遺言。』より)

寂しさを感じる瞬間

 もちろん、養老さんは、まるに恨み言を言いたいがためにこう書いているわけではない。なぜまるはありがとうと言わないのか、いや、なぜ動物は話せないのか。ここから養老さんの思考は深まっていき、人間と動物との世界の捉え方の違いなどに発展していく。同書では、感覚を通してどう世界を捉えるか、その感覚の違いを「まると自分」を比較して抽出していくのだ。ちなみにタイトルに「。」がついているのも、実は「まる」とひっかけて、という意味合いがあったとか。

 そんな考えさせる猫、まるは、1年くらい前からよく鳴くようになり、寝てばかりいるようにもなったという。

 昨年11月13日には、調子を崩し、胸水を獣医で頻繁に抜くなどの処置をしていたものの、ほとんど動くことができなくなった。老衰で息を引き取ったのは12月21日の午前11時。目を離したすきに、眠るように息を引き取っていたという。

 養老さんはこう語る。

「もともと、まるは動かない猫でした。最期にわかったけれど、心臓が悪かったからかもしれません。動きが鈍くて、抱かれるのが好きじゃなかった。走り回るっていうこともなくてね。事件は起こさないタイプで、食べ物以外に興味なし。朝起こしに来るのだって、お腹が空くからでね。何かこちらに働きかけをしてくるっていうことはとにかくないから、こちらが常に気に掛ける方になっていたんですよ。まるはどうしているか、気にするのはいつもこっち」

 養老さんは、まだまるが生きている頃の感覚が抜けない。生前は音を立てないで縁側のそばを歩くようにしていたが、いまでもついそうしてしまう。

「もうそんなことする必要がないことに気付いて、その瞬間に寂しく感じます」

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