「二階俊博」が“総理以上”の権力を持つ理由 永田町で囁かれる“都市伝説”とは

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語り継がれる「都市伝説」

 10月20日夜、東京都港区、ロシア大使公邸。

 ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使との面会に臨んだ二階は、しばし「沈思黙考」していた。もしかしたら「瞑想」していたのかもしれない。その様子を敢(あ)えて何かに喩(たと)えるとするならば、船を漕(こ)いでいるようにも映ったという。

 また現在、永田町では、二階にまつわるこんな「都市伝説」がまことしやかに人から人へと語り継がれている。

「早朝、誰もいない自民党本部でひとりポツンとしていた」

「議員会館の地下でなぜかウロウロしていて、番記者に自分の部屋まで連れていってもらった」

「常に付き随うSPが、次の予定まで教えてあげていて介護人状態」

「椅子から立ち上がる際、『総力結集!』と言って自らを鼓舞している」

 齢81、二階俊博。

 それでも二階は大河の流れをものともせず、現在進行形で最長記録を更新し続けている。時に総理を動かしながら。

 11月12日、二階は交じり合うことがないと思われていたふたりを会食させた。

 菅と小池。

 パフォーマンス先行の小池を、菅は生理的に受け付けられないほど毛嫌いしている。

 ある大手マスコミ幹部は、今でも鮮明に記憶している。

「官房長官時代の菅さんと会食した際、『東京都はカネを持っているのに、五輪費用をケチろうとする。小池は何様のつもりなんだ』と、延々と小池さんの悪口を言っていた」

 天敵に見える菅と小池だが、二階立ち合いのもと、この日の夜、ホテルの日本料理屋で向かい合った。二階と小池は新進党、保守党時代の同志である。

 永田町にはひとりも友だちがいないとされる「一匹女狐」の小池。そんな彼女と付き合える「希少種」の二階。その二階を通じた小池側からの会食の打診を、すなわち事実上、二階からの申し入れを、菅が断れるはずもなかった。

 そして12月14日、菅は「8人ステーキ会食」に参加して集中砲火を浴びる。その店には、みのもんた、王貞治など「二階人脈」が集(つど)っていた。そこに顔を出さない道を選ぶことは、菅にはできなかった。

 総理までが二階の「磁力」に吸い寄せられ、引っ張り回される。彼はどのように人心を掌握し、「数」を得てきたのか。

 林幹雄は胸を張る。

「二階さんは『来る者拒まず去る者追わず』という姿勢です」

 鶴保が続ける。

「二階さんはマメで、気遣いの人です」

 つまりは「何でもあり」の人たらし。二階は、誰でも受け入れる「柔軟さ」を武器に永田町を生き抜いてきた。だが柔軟さは、時に「無原則」と紙一重であり、あるいは「無節操」と隣り合わせでもある。

 その融通無碍(ゆうずうむげ)さによって中央政界では最長幹事長として君臨しつつ、地元では国賊と罵られる。曖昧模糊として掴みどころのないこの政治家は、いかにして絶対的権力者の座に上り詰めたのか。

(敬称略)

週刊新潮 2020年12月31日・2021年1月7日号掲載

特集「『菅総理』を引っ張り回す! 『二階俊博』面妖なるドンの正体」より

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