テコンドー協会内紛から1年 金原昇元会長は「協会に未練はない。今後は恋に生きる」

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 全日本テコンドー協会の内紛から1年。あの時、激しく対立した男女がいた。髪型が印象深い金原昇・元会長(66)と、理事会の最中、卒倒した高橋美穂・元理事(46)である。2019年の秋口から年の瀬にかけて、強化方針などを巡って激しく衝突した2人は結局、揃って協会を去ったが、今、騒動をどう振り返るのか。話を聞きに行った。

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 東京・新宿に構えるオフィス。高橋氏は「ネットラーニング」という人材育成事業を手がける企業の執行役員として働いていた。

「15年に理事になるまで、もともと私はこの会社で働いていました。兼業として4年間だけ協会の理事に入っていただけですので、元に戻ってこれまで通りに働いています」

 高橋氏といえば、思い出されるのが“卒倒騒ぎ”だ。19年10月8日、約7時間に及んだ理事会。バルセロナ五輪元代表でもある彼女は“選手ファースト”を訴え、当時、協会の“独裁者”として批判を浴びていた金原氏と激しく対立し、過呼吸になって病院に緊急搬送された。

「あの時は必死でした。気づいたら、意識が遠のいていて……。前段として、9月の代表合宿に26人招集したものの、2人しか集まらなかった非常事態が起きていた。選手たちの不満を聞いた私は、副会長だった岡本(依子)さんと一緒に、金原体制のままじゃ五輪に向けて闘えないと決意し、全理事に総辞職を提案したんです。一方、金原さんたちからは『選手たちを煽っている』『金原会長に対する名誉毀損で刑事告訴する』などと激しい攻撃を受けました」

金原体制の暗部に蓋をして現体制へと移行した不安

 結局、その日の理事会では何も決まらなかったものの、高橋氏らの体を張った抵抗がメディアで大きく報道でされ、流れが変わった。10月末、全理事は辞職し、日本卓球協会名誉副会長の木村興治氏をトップとする新体制が発足。だが、すべて丸く収まったと思っているわけではないという。

「私自身は辞めたことに何も不満はありません。ただ、あの問題の収拾の仕方が中途半端だったのではないかと思っています。騒動の最中、現在、協会のアドバイザーになっている境田正樹弁護士をトップとする検証委員会の調査が入りましたが、金原さんにコンプライアンス違反がまったくなかったと結論づけられました。金原さんが私たちに『刑事告訴するぞ』などと脅しをかけた様子が録音にも残っていたにもかかわらず」

 現体制へ移る過程で、すべてに蓋がされた印象があるというのだ。

「ほかの数多くあった『ハラスメント疑惑』や『反社疑惑』も結局、不問にされてしまった。境田さんが金原さんに退任してもらうために、何か取引を交わした可能性があるんじゃないかと考えています」

 その結果、金原氏が復権する可能性が残ってしまったと彼女は危惧している。

「現に、あの後、金原さんは昨年2月に岐阜県で行われた選考試合にも平然とやってきた。その際、現執行部と激しい言い争いをしていたとも聞いています。現会長の木村さんはご高齢ですし、実際に協会の実務を担っているのは、境田弁護士と同じ弁護士事務所の岸郁子弁護士。つまり、協会を実質的に仕切っているのは境田さん。もちろん金原さんが居座り続けるよりもベターではありますが、膿を出し切れなかった境田さんに協会を再生できるのか不安です。現執行部にテコンドー出身者が1人もいないことも心配な点です」

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