元旦ルポ 東京「世田谷区」のコンビニが野菜販売で大盛況のウラ事情

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 24時間営業の見直しや弁当の値引き販売解禁など、近年、少しずつ変化が見え始めるコンビニ業界。時代に合わせたコンビニの未来像は、こんなユニークな売り場からも窺えるかもしれない。流通アナリストの渡辺広明氏が、正月の「野菜取り扱いコンビニ」を取材した。

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 セブン-イレブンの店頭に山と積まれた、キャベツやみかん、パプリカにナス……。店先には〈マルシェ ここに来れば何かがある〉と書かれた看板が立っています。ここは東京・世田谷区にあるセブンの「世田谷弦巻1丁目店」。6年前のオープン当初から、駐車場に面した店頭と店内のスペースで青果を販売しているそうです。

 1月1日も、店には30種類近くの野菜や果物が売られていました。中にはペコロスやビーツなど、普通のスーパーでは見かけないような品も。熊本産の大ぶりのトマトが2個で280円、チンゲン菜が1袋80円、生姜が1袋で200円と、値段も市場価格と連動し、良心的です。

 店先には声を上げながら野菜を補充しているお店の方もいて、こうした青果店のような接客も、ちょっとコンビニでは珍しい光景です。なんでも〈毎日、大田マーケット(※大田区にある青果市場)にスタッフみんなで行きます〉(店先の看板より)とのことで、まさに“プチ八百屋”です。

 店を訪れたのは昼過ぎでしたが、すでに駐車場はほぼ満車で、レジの前には列ができていました。同店から最も近い “普通の”セブンは客足がまばらだったこととは対照的です(こちらが一般的な正月のコンビニの光景でしょう)。見たところ、店を訪れるお客さんの8割は、カゴに何かしらの野菜や果物を入れていました。売り場にはすでにカラになっている商品もあり、“野菜や果物を買う店”として地域の高いニーズがあることが窺えます。

 同じ世田谷区内では、野菜を扱うファミリーマート(松陰神社駅前店)があったり、スリーエフと一緒になったローソン(LTF松陰神社駅前)でも青果が販売されています。もともと世田谷区は、65歳以上の人口が約18万4000人と、「老齢人口」が東京都内でもっとも多いエリア(参考:住民基本台帳による東京都の世帯と人口 令和2年データ)。若い世代に比べて自宅で食事を作る習慣が根付いている世帯が多いことが、こうした青果取り扱いのコンビニの需要を生んでいると考えられます。

 業界関係者によると、これらの店舗の青果の日販(1日の売り上げ)は平均2~5万円。中には10万円をゆうに超える店もあるといいます。セブンの全店平均日販が約65万円、ローソンとファミマが約53万円であることを考えると、青果が主力商品になりうることが分かります。

 しかも今年は、コロナ禍のために帰省せず東京に留まる人が多い。にもかかわらず、正月なのでスーパーや外食店などは営業していない。そういった事情も手伝って、このタイミングで、この地域の「青果コンビニ」の需要は、よりクリアになったように思います。

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