元旦ルポ 東京「世田谷区」のコンビニが野菜販売で大盛況のウラ事情

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求められるコンビニの“多様化”

 もう一歩踏み込んで考えてみると――シニア人口が多い地域で青果コンビニの需要が高いということは、将来の日本の超高齢化社会では、他の地域でもこうしたコンビニが増えるのかもしれません。そうなった時に求められるのは、コンビニの“多様化”です。

 基本的にコンビニの売り場には、同じチェーンであれば、同じ商品が並びます。これはセントラル仕入れ、つまり、コンビニ本部が同じ商品を大量に仕入れ、それを売るよう各店舗に推奨するシステムの賜物です。昨年の公正取引委員会の調査では、時には発注を指示する本部主導のやり方が、仕入れ強制などにつながると指摘されていたわけです。これまでのコンビニの地域性といえば、観光地の店でお土産を売るくらいが限界だったのではないでしょうか。

 ところが、野菜や果物を売るとなると、コンビニ本部から店に「キャベツを○個仕入れて、○円で売ってください」とはいきません。店が仕入れられる青果市場によって卸の値段は変わってきますし、取り扱う青果の種類も違うからです。ですから、さきほど紹介した世田谷区の3店では、本部を介さず、青果を扱う業者と店が独自に契約し、委託の形で販売しているようです(中には青果販売の会社がフランチャイズとしてコンビニを運営しているというケースもありそうです)。勝手に独自に仕入れて青果を売るわけにはいきませんから、事前に本部に確認し、店と本部が互いに了解の上で取引する必要はあるようですが。

 もちろん、近所にスーパーが多く並んでいるような地域では、コンビニで青果を売る優位性は低いでしょう。また、新たに青果店を開店しても儲からないのと同様、コンビニの「看板」の信頼とそれによる集客があってこそ、青果コンビニは成り立ちます。ですからセントラルで仕入れる、従来的なコンビニの品揃えも疎かにできません。要は、画一的な仕入れでなく、地域の需要を見極める力が、今後のコンビニには求められるわけです。これは青果だけでなく、お酒や日用品、文房具、衣料の品ぞろえにも言えることです。

 肉や魚は、売り場に冷蔵設備が必要なためか、大々的に取り扱っているコンビニはまだ聞きません。しかし将来的には、店舗近くの肉屋や魚屋、地域の卸業者と提携して、販売する店舗も現れるかもしれませんね。

 われわれ利用者からすれば、店舗が多様化することで、今以上に、必要なものがコンビニにあるわけです。コンビニはよりconvenience(便利)になっていく可能性を秘めています。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

週刊新潮WEB取材班編集

2021年1月2日掲載

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