神戸山口組の「井上組長」に引退を迫る幹部も…ヤクザ界の2020年を振り返る

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6代目と拮抗することは無理

 井上組長や、その組員たちはどうなるか。

「さすがに神戸山口側から中核の山健組の半分ほどが抜けてしまったんで、6代目と拮抗することはさすがに難しいでしょう。井上組長に従ったのは古株と呼ばれる面々で、私の知り合いにもいますけれど、“神戸を抜けるつもりだったが、今さらヤクザをやめても真人間に戻れるまで時間がかかるし、それなら先の短い人生、ヤクザのままでええかな”などとこぼしておりました」

 垣間見えるのは、現在のヤクザ全般が置かれている苦しい立場のようだ。

「いわゆる5年ルールというやつで、ヤクザを辞めてもその後の5年間は暴力団関係者とみなされ、ヤクザ同様に銀行口座を開いたりできない。さらに、警察当局は“偽装破門”を警戒して、正式に破門状などが出回っていないと、“暴力団を辞めたとは認めない”という風になっています。私の知り合いの場合、もう70歳を超えているので、仮に『真人間』に戻れたとしても後期高齢者で、特にメリットを享受できないという判断をしたというわけですね」

 本来、ヤクザを取り締まり、減らすために作られたはずの5年ルールが、逆に足を洗おうとする者たちの足かせになっている部分が少なくないようだ。

 ヤクザへの風当たりは強まる一方である。今年は、ハロウィーンの時期に、山口組の総本部敷地内で組員が地元の子供らに菓子を配る行為について、ついにお上がNGを出したのも話題になった。

 兵庫県議会が10月5日、暴力団員が18歳未満の子供に金品を渡す行為などを禁じる改正暴力団排除(暴排)条例案を本会議で可決したのだ。

 竹垣氏は、こうした動きに理解を示しながらも嘆く。

「純粋なボランティア活動であっても、汚れた手が稼いだ汚れたカネはあかんということなんやろうね。暴力団撲滅を私は謳っていますし、その論理はわからんでもないんですが、ここまで国家権力の包囲網が強まると、憲法に記された『結社の自由』ってどないなっとんやろという風にも感じたりします」

 さて2021年、この業界はどうなるか。

週刊新潮WEB取材班

2020年12月31日掲載

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