「玉川徹」の“煽り発言”を検証 エビデンスなし、自殺者について「因果関係わからない」

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「正直キツいわ」

 しかるに、大阪の場合、GoToの一時停止ばかりか、飲食店への夜9時までの時短要請も、12月29日まで延長した。医療を逼迫させないため、とのことだが、結果として、大阪の飲食店の経営は逼迫している。鶴橋で焼き肉店を営む70代の女性が言うには、

「コロナになって、1日20万円くらいあった売り上げが1万円の日もありますねん。うちは30年やってて、高齢のお客さんが多いでしょ。来にくいんです。前はユニバ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の袋をもってウロチョロしてる子もおったけど、いまはゼロ。正直キツいわ。最近もこの辺で2軒、焼き肉屋が無くなってん」

 片や、ミナミの難波で接待を伴う複数の飲食店を経営する女性は、こう話す。

「コロナの影響で無くなるお店は、金額と女の子の質が合っていないところ。企業の接待でキャバクラとか使っていたのが、コロナの影響で使えなくなった。自腹で行くとなると、かわいい子がいて安い店に行きたがりますよね。かわいい子がバニーの恰好をしている難波のガールズバーは、常に席は8割方埋まっています。みな自腹で来てくれるんです。いまは朝5時までやっています」

 たくましいが、結果、どんちゃん騒ぎも増えているとしたら、なんのための時短要請であるのか。

玉川氏が張る予防線

 話を玉川氏に戻すと、彼は12月14日の放送で開き直りかのような態度を見せている。

「あいつは煽るばかりで、そんなにたいしたことが起きなかったな、というなら、そのほうがいいと思ってる。(中略)1年後とかに、今年から来年にかけての冬がすごいことになってしまった、もっと強い手を打っておけばよかった、と思うよりは、ちょっと強めすぎたかもしれないけど、感染者も死者も少ないし、高止まりの状態が続かなくてよかったねっていうほうがいいんじゃないかと」

 自分の煽りが外れても、感謝こそされても責められる理由はないと、予防線を張っているのだ。感染症対策の犠牲になっている人がいる、と問われると、

「この話をするときに、自殺の話が出てくるのもすごい違和感を覚えていて、その人たちがどういう理由で自殺したかもわからず、直接因果関係もわからないのに。(中略)人数が増えているのを、たとえば経済の理由だとするのであれば、そういう人たちにお金が届くようにするってことが大事なのであって、(中略)僕は自殺の人たちを、こういうふうな形で使うことに、すごく違和感があります」

データもないまま煽っていいのか

 因果関係が不明だから、切り捨てても非難されない、というトンだ論法だが、感染者数が指数関数的に増える等々、無根拠に煽る同じ口が、なぜそう言えるのか。医師で医療経済ジャーナリストの森田洋之氏が言う。

「実は、過剰なくらい感染対策をしたほうがいい、と主張する専門家もいますが、社会全体の最適解という視点が抜けています。視野が狭い。自殺者も、因果関係が特定できないからコロナの死者数とくらべるべきでない、という発言も結構ありますが、小学生がよく言う“証拠はあるのか?“みたいなこと。どうしたらみんなが幸せになれるかを考える段階で、“証拠がないんだから俺たちは正しい“と逆ギレする人は信用できません。そして、データに基づいて検証することが大事なのに、現時点でデータもないまま、煽っていたほうがいい、などと言うのは、非常にナンセンスです。マスコミが正義を決めてしまうようなことになっていますよね。われわれが正義だからこれでいいんだ、という、やったもん勝ちみたいな論理です」

 コロナ禍が始まって10カ月以上、わかってきたことは多い。人の動きを止めずに医療の逼迫を防ぐ方法もある。しかし、それらには目を向けず、裏づけがない話で視聴者を煽り、自分に都合が悪い話からは因果関係が不明だと逃げ、だれも求めていない使命に酔って、世を惑わす。こんな空論に、多少でも引きずられている感があるのが、コロナ対策の最大の問題点であろう。

週刊新潮 2020年12月24日号掲載

特集「『コロナは煽っていい』『自殺は関係ない』ワイドショーの使命に自己陶酔『玉川徹』の口にマスクを!」より

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