12球団で最も低迷する球団「オリックス」に見え始めた“希望の光”

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 現在、プロ野球の12球団で最も低迷する球団といえば、オリックスになるのではないか。最後に日本シリーズに進出したのは、イチローがまだまだ若手だった1996年まで遡らなければならない。2000年以降にAクラス入りを果たしたのはわずかに2回だけで、低迷期が続いている。

 2020年シーズンも開幕から大きく躓き、シーズン前半で西村徳文監督が事実上の解任となって、最終的にも前年を下回る勝率で2年連続の最下位に終わった。だが、現在のチームをよく見てみると、そこまで悲観するような状態ではなく、むしろ明るい材料が多いようにすら感じる。オリックスに見え始めた“希望の光”にスポットを当てながら、低迷期を脱出するために必要なポイントを探ってみたい。

 まず、チームとして最大の強みは強力な先発投手陣だ。2019年は山本由伸が最優秀防御率、山岡泰輔が最高勝率のタイトルを獲得。2020年は山本が自身3つ目のタイトルとなる最多奪三振に輝いた。山岡は故障で出遅れて4勝に終わったものの、防御率は2.60と規定投球回不足ながら、前年を大きく上回る数字を残した。さらに3年目の田嶋大樹は初めて規定投球回に到達。山崎福也、張奕、榊原翼、宮城大弥などにもブレイクの兆しが見られる。ここで名前を挙げた全員にまだまだ若さがあり、伸び代を十分に残している。2020年の先発投手のチーム防御率はソフトバンクに次ぐ2位だったが、翌年以降さらに改善していくことが期待できそうだ。

 課題はリーグワーストの得点数に沈む野手陣だが、こちらもプラス要素はある。最も大きいのが主砲の吉田正尚の存在である。プロ入りから2年間は腰痛に悩まされたが、負担の少ないフォームにしたことで成績が安定し、2020年は初のタイトルとなる首位打者に輝いた。出塁率の高さと長打力を兼ね備えた選手という意味では、吉田は柳田悠岐(ソフトバンク)と双璧で、若さもあり今後も中心に打線を考えることができる。吉田以外に長打力のある選手では、ベテランのT-岡田が復活の兆しを見せているほか、シーズン終盤に一軍に定着したモヤもまだ若いことが心強い。

 くわえて、現有戦力以上にチームの変化を感じるのが、ドラフトでの指名である。阪急時代から社会人出身の選手がチームの中心で、それはオリックス、さらに近鉄と球団合併しても大きく変わることはなかった、統一ドラフトとなった2008年から2017年までの10年間に上位(1位と2位)指名した20人のうち高校生は甲斐拓哉、後藤駿太、三ツ俣大樹のわずか3人だった(甲斐は退団、三ツ俣に移籍)。

 ところが、2018年は太田椋、翌年は宮城と紅林弘太郎と高校生の上位指名を2年間続け、さらに2020年も山下舜平大、元謙太、来田涼斗と1位から3位まで高校生を指名した。この三人は、いずれも高校球界では名の知れたスケールの大きい選手ばかりだ。チームの成績が悪くなると、近視眼的になり、中途半端な即戦力を上位で多く指名するケースが少なくないが、オリックスは、それとは“真逆の戦略”をとっている。もちろん、高校生の有望株だけ揃えれば良いとわけではないとはいえ、現在の戦力を考えると、スケールの大きい選手が不足していることは間違いない。こうした意味でも、オリックスにはチームを大きく変えようという意識が強く感じられる。

 今後、重要になってくるのは、目先ではリリーフ陣の整備と外国人の活用で、将来を考えると若手の積極的な抜擢である。気になるところ点、リリーフ投手に故障者が非常に多いところ。過去にも塚原頌平、佐藤達也、近藤大亮、黒木優太などの投手が相次いで長期離脱となり、塚原と佐藤は既に球団を去っている。ロッテのように、一部の投手に負担が集中しないようにリリーフ陣の起用を考える必要はあるだろう。一方、外国人選手については、先述したモヤの存在は好材料だが、ジョーンズの状態が今年も上がらないようであれば、年齢を考えても早めに見切りをつけて、補強に動くことも検討すべきだ。

 そして、今後に向けての最大テーマが若手の抜擢だ。シーズン途中から指揮を執る中嶋聡監督は、杉本裕太郎や大下誠一郎といったチームに足りない強打者タイプを積極的に起用していたが、この方針はよく理解できる。さらに、太田、宜保翔、宮城、紅林といった高校卒の若手に一軍を経験させたことも大きい。あとはこれが一時的なものではなく、継続できるかが重要だ。ポジションは奪うものという考え方もあるが、将来のチームを担うような有望な若手を開花させるには、ある程度の我慢も必要になってくるだろう。

 若手にも楽しみな有望株は多いだけに、今後オリックスがどのように再生していくかにぜひ注目してもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月25日掲載

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