「大谷翔平」の二刀流は来季で見納め?米メディアが不安視「次に大きな故障したら…」

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 新型コロナウイルスの影響によってさまざまなことが従来とは異なる形で行われた2020年のメジャーリーグ。7月下旬まで開幕が遅れたことは、トミー・ジョン手術のリハビリのため、投手としての復帰が4月には間に合わないとされていた大谷翔平にとって追い風になるかと思われたが、残念ながらそうはならなかった。

 結論から言うと、今季の大谷は投打ともチームの期待に応えられなかった。2年ぶりの復帰登板だった7月26日のアスレチックス戦では1死も取れずに3安打、3四球、5失点といいところがなく、8月2日のアストロズ戦では2回途中に球速が急落。押し出し2つを含む5四球を出して降板した。

 その後の検査で右ひじ付近の筋肉が損傷していることが判明。短縮日程のため回復しても残り試合での登板が難しいことから、投手としてはわずか2試合でシーズン終了となってしまった。

 それならば、打者として貢献したいところだったが、こちらでも結果を出すことができず。シーズン終盤ではスタメンを外されることも増え、44試合の出場で打率.190、7本塁打、24打点という成績に。打撃力が期待される指名打者でこの数字では“赤点”をつけられてもやむなしだろう。

 大谷のメジャー3年間で二刀流として機能していたのは、1年目半ばまでのわずかな期間でしかない。だが、その短い時間で投打ともに一流になり得る兆しを大谷が見せたのも事実だ。実際、今オフに就任したエンゼルスのペリー・ミナシアン新GMも「99パーセントの人間ができないことを彼はできる」と大谷のポテンシャルを絶賛。若い選手に浮き沈みはつきものと擁護し、来季も二刀流プレーヤーとして期待していることを明言した。

 その一方で、米メディアでおおむね一致しているのは「次に大きな故障をしたら、投手としての大谷は見納めだろう」という見方だ。やはりトミー・ジョン手術を受け、そこから復帰したと思ったら、たった2試合で再び故障したという事実は重い。ならば今季こそ不振に陥っていたが、昨季までの2シーズンで40本塁打を放った実績がある打者に専念させた方がいいという意見は一定以上の説得力を伴っている。

 ミナシアンGMとしても、問題山積なエンゼルスの現状を改善するために大谷ばかりを見ているわけにもいかない。特に今季は6勝3敗、防御率3.29と奮闘したディラン・バンディ投手以外は頼りなかった先発投手陣の再整備はオフの必須事項だ。

 幸い今オフはナ・リーグのサイ・ヤング賞右腕トレバー・バウアーを始め、マーカス・ストローマンや田中将大など実績あるフリーエージェント投手が揃っている。少なくとも数人は獲得して来季に備えたいところだろう。

 ただ、ここで大谷を先発投手として数えた際の6人ローテーションがネックとなる可能性が浮上してくる。従来は5人で回す先発ローテを6人で回そうとすれば、必然的に1人当たりの登板数は減少する。すると投球回数などで出来高ボーナスが発生する契約を結ぶ場合に従来どおりに基準設定すると投手側が一方的に不利になってしまうのだ。

 登板機会が減れば勝利数や奪三振数も減るため、タイトル争いでも後れを取ることにつながってしまう。これではバウアーのようなエース級の投手はエンゼルス入りを渋るだろう。エースだけは中4日で登板間隔を維持する手もあるだろうが、それでは残りの投手に調整面でのしわ寄せが来るのは避けられない。

 では、出来高ボーナス発生の基準を下げて、複数年契約を結んだ場合はどうなるか想像すると、チーム事情が変わって途中で5人ローテに戻した場合に球団側が損をすることになるのが予想される。そもそも水準以上の先発投手を6人も揃えることは至難でもあり、力の足りない投手を無理やり起用しても望む結果は得られないだろう。6枠目をオープナーで乗り切るプランもあるが、いずれにせよ負担や誤算がどこかに発生する確率は高まる。

 そもそも大谷の二刀流を続けるとして、ポジションをどうするかという問題も出てくる。今季終盤に大谷が不振でスタメンを外れることが増えた時期に、エンゼルスでは大砲候補のジャレド・ウォルシュが台頭。正一塁手として先発起用されることが増え、最終的に32試合で打率.293、9本塁打、26打点、OPS.971と猛アピールに成功した。

 来季はこのウォルシュが一塁手としてスタメンの座をつかむことが濃厚で、そうなると大谷は41歳になる大ベテランスラッガー、アルバート・プホルスと指名打者の枠を争うか、併用になる可能性が高い。プホルスもさすがに全盛期の面影をなくしつつあるが、それでも完全な代打要員になるほどではまだない。

 そこで浮上するのが、大谷が日本ハム時代にはおなじみだった投手と外野手での二刀流だ。実際に8月には外野で守備練習したことをジョー・マドン監督が明らかにしている。守備の負担がない指名打者でも故障の多い大谷が、外野守備をこなしつつ投手としてマウンドに立てるかという疑問はあるものの、知将として名をはせるマドン監督ならば、うまいやりくりをするのではないかという期待感はある。

 また一部では、大谷を先発ではなくクローザーで起用しての二刀流を推す報道もある。これは6人ローテの弊害を避ける意味では確かに妙案ではあるが、さすがに打者として出場した試合中にクローザーとして肩を作るのは難しいのではなかろうか。

 さまざまなプランが報じられているように、来季の大谷がどう起用されるのかは流動的だ。オフのエンゼルスの補強がどうなるかによっても事情は変わってくるだろう。現時点ではっきりしているのは、投打の二刀流を続けるチャンスは与えられそうだということだけ。まずは大谷がケガなく来季の開幕を迎えること、そして新型コロナウイルスの影響を受けることなく無事にシーズンが始まることを願うばかりだ。

杉山貴宏

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月23日掲載

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