低調だった秋の恋愛ドラマ リアリティーと今日性の欠如で視聴者がソッポ

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 秋ドラマが全般的に低調だった。「半沢直樹」(TBS)の大ヒットに沸いた夏ドラマが嘘のよう。その理由については諸説が取りざたされているが、一言で言ってしまうと、多くの視聴者にとっては面白くないドラマが多かったからだろう(視聴率は全てビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 ドラマの合格ラインは世帯視聴率では10%とされている。なので、秋ドラマで不思議だったのは「ルパンの娘」(フジテレビ)の続編が放送されたことである。

 このドラマは荒唐無稽で愉快だが、昨年の初作の平均世帯視聴率は約7・1%。これまでの常識なら続編は作られない。

 それでも制作された続編の平均世帯視聴率は約5%。続編が初作を超えることはまずないので、大方の予想通りだった。このドラマを好きな人も相当数いるだろうが、大多数の人は関心がなかったのだ。

 このドラマは来年、映画化される。12月3日の第8話終了後に発表された。もしも続編放送の理由の1つが、作品への関心を逸らさないためだったなら、視聴者は半ばPRを兼ねたドラマを見せられていたことになる。そんなことが常態化したら、視聴者のドラマ離れは加速するだろう。

 恋愛ドラマの不振も秋ドラマの傾向の1つ。元毎日放送プロデューサーで同志社女子大教授(メディア論)の影山貴彦氏が興味深い話をしてくれた。

「うちの学生がこう言うんです。『私たちが恋愛ドラマ離れしているんじゃなくて、見たい恋愛ドラマがないんです』と」(影山教授)

 恋愛ドラマが振るわない一番の理由は、制作者が世間の恋愛観を把握していないことにあるのではないか。漫画などの原作に頼るだけでなく、ほかの業種と同じように、そろそろ徹底したマーケット調査を行うべきだろう。

リアリティに課題

 その恋愛ドラマの1つ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」(日本テレビ)も第8話(12月9日)までの平均世帯視聴率は約7・7%で、やはり苦戦している。

 主人公は新型コロナ禍下で奮闘する産業医・美々(波瑠、29)。脚本を書いているのはベテランの水橋文美江さん(56)だから、セリフは絶妙だが、どうして美々がSNS上で知り合った同じ社内の青林風一(松下洸平、33)に恋い焦がれたのか、ずっと釈然としない。同じ思いの人もいるのではないか。

 美々は28歳。上から目線で男を食べ物に例えるクセがある。そんな女性がSNSでの文字のやり取りだけで男性に強く惹かれるものだろうか。

 折角、コロナ禍まで取り入れ、リアリティーを強調しようとしながら、肝心の主人公のキャラクターにリアリティー不足を感じざるを得ない。これも世間とのズレの1つと言えるだろう。

 第8話(12月8日)までの平均世帯視聴率が9・1%の「この恋あたためますか」(TBS)にもリアリティーに首を捻る部分がある。ストーリーの運び方が強引という印象を受ける。

 森七菜(19)が扮する主人公の井上樹木は、コンビニチェーン社長だった浅羽拓実(中村倫也、33)にスカウトされ、スイーツ開発を任された。そこから樹木が浅羽に心を寄せるまでの展開が飛ばしすぎだったのではないか。

 樹木はアイドルグルーブの一員だった時代に付き合っていた男性に振られると、間を置かず浅羽に恋をした。「好きなの」と切実に訴えた。だが、なぜ浅羽を好きになったのかがよく分からない。前の彼とは随分と違う。だから見る側としては感情移入しにくい。

 浅羽側も同じ。同じくスイーツ開発担当者の恋人・北川里保(石橋静河、26)から別離を告げられると、瞬く間に樹木に傾いた。その心象風景の描写が弱い気がしてならなかった。

 こちらもスイーツ開発などの場面はリアルなのに、人の描き方は細かさに欠けているように思えてならない。やはり世間とのズレではないか。

「リモラブ」もこのドラマも原作がなく、オリジナルストーリー。それだけに、世間の感覚や恋愛観ともっと向かい合うべきだった気がする。

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