BCG接種国は新型コロナの死亡者が20分の1 回復者の98%が抗体保有のデータも
98%の回復者に抗体が
新型コロナに感染した後、抗体は短期間で消えてしまう可能性が指摘されてきたが、研究によってほとんどの回復者が半年後にも抗体を保有していたことがわかった。さらに、BCG接種がワクチンの役割を果たしているという指摘も。
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報道でご存じの方も多いと思うが、横浜市立大学の研究グループが、新型コロナに感染して回復した376人を調査した結果、大半の人が半年後にも抗体を保有していたのだ。同大医学部臨床統計学教室、山中竹春主任教授が説明する。
「新型コロナウイルスに感染すると、多くの種類の抗体が体内にできます。その一部が再感染の阻止を担う中和抗体です。われわれは感染して回復した方から6カ月後に採血し、本学で微生物学が専門の梁明秀(りょうあきひで)教授が開発した抗体検査を用い、4種類の抗体を測定しました。その結果、ほとんどの回復者に残っている抗体が同定されました。さらに特殊な実験室で中和抗体を測定すると、98%の回復者に残っており、日本初の大規模データとして認められたのです。これまでの報道から受ける印象と、だいぶ異なる結果でした」
事実、夏ごろには、抗体は2~3カ月で消える、という報道が目立った。
「ただ、イギリスや中国の先行研究も、論文のデータを見ると“時間の経過とともに抗体の量や中和抗体の強さは多少減っても、多くの人が(抗体検査の)陽性であり続けている可能性”が読み取れました。だから抗体の量は、報道されるほどは劇的に減っていないだろう、と考えていましたが、100%に近い人に抗体や中和抗体が残っているとまでは、予想しませんでした。今回の成果は、精度が世界最高クラスの抗体検査技術に依拠しているところが大きいと思います」
むろん、この調査結果は収束への見通しに大いに関係するはずだ。
「中和抗体を保有しているとウイルスが細胞に入るのをブロックするので、保有していない人にくらべ、再感染の確率は低くなるといえます。ワクチン開発の臨床試験でも“中和抗体が保有されているかどうか”は評価項目となります。一般に、ワクチンで作られる免疫が、自然感染で獲得した免疫を大きく上回るとは考えにくく、もし自然感染による獲得免疫が2~3カ月で消えるようなら、ワクチンによる免疫もそれ以下になる可能性があった。自然感染した人の中和抗体が6カ月以上は保持されるとわかって、ワクチン開発にも期待が持てると思います」
そして、次のように締めくくるのだ。
「新型コロナのような新興感染症では、得られる情報が限定的であるため、SNSやネットメディアの発達と相まって、悪い情報が一気に広まりやすい。その点、データをていねいに取って客観的な議論を重ね、多くの人が思っていたことと異なる結果を出せたことには、意味があると思います。また、予防のためのワクチン開発と、感染した場合の治療薬開発を両輪で推し進めれば、収束への見通しも立ってくると思います」
日本人を対象にした調査だったが、山中主任教授の見解では、イギリスや中国のデータとくらべてもさほど矛盾がないという。
BCG接種国は死亡者数が20分の1
さらには、日本人にとってはBCGが奏功していると指摘するのは、元金沢大学医学部講師で医学博士の山口成仁氏である。
「日本株を含むBCGを接種していたアジア及び中近東10カ国をA群、日本株BCGを接種していたアフリカ大陸16カ国をB群、ロシア株を含むBCG接種が義務化されていた15カ国をC群、BCGの接種義務がなかったか、日本株とロシア株以外のBCGが接種されていた19カ国をD群とします。これらのビッグデータをもとに、各国の新型コロナによる100万人あたりの死亡者数を比較しました。するとA群とB群は22・5人、C群は90人なのに、D群は512人でした。日本株のBCG接種国は、日本株もロシア株も接種がない国とくらべ、死亡者数が20分の1。100万人あたりの死亡者が9・7人だった日本にかぎれば、50分の1以下です」
「臨床と微生物」11月号にも掲載されたこのデータは、どう読めばよいのか。
「BCGが特異な自然免疫、細胞性免疫を活性化させて、新型コロナによる重症化を防いでいると考えられます。特に日本は、1935年以降に生まれた人はみな接種を受けている。日本人の95%以上が、新型コロナのワクチンをすでに接種しているのと同じ状況です」