伊吹衆院議長の名言 眞子さまの父親と皇嗣であることの「相克」に耐える秋篠宮さま

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「皇嗣が次の天皇になることは確定していない」と言う女系天皇論者

 立皇嗣の礼を受けて、識者がさまざまなメディアで皇位継承に関する意見を述べているが、その中に極めて不思議なコメントがあった。皇室評論家の肩書を持つ高森明勅氏の「皇嗣は皇太子や皇太孫と異なり、必ずしも次の天皇になることが確定していない」とする発言だ。一部の新聞などに掲載されたもので、「皇位の安定継承を目指して検討する際、秋篠宮殿下の即位を既定の事実のように捉えるのではなく(中略)ゼロベースで最善の解答を探るべきだ」とも話している。

 皇嗣とは次の天皇になる方のことを指すはずだが、確定していないとはどういうことか。ゼロベースとは皇室典範に規定された法律上の事実を無視するということなのか。

 皇室典範特例法には第五条に「第二条の規定による皇位の継承に伴い皇嗣となった皇族に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太子の例による」が設けられた。この「皇太子の例による」とは、まさしく「皇太子と同じ扱いとする」ことであり、この規定も無視していることになる。

 そう思っていたら、高森氏はこんなコメントも付け加えていた。「秋篠宮殿下の場合、天皇陛下より5歳お若いだけなので、将来、陛下がご高齢を理由に退位された後、実際に即位されるとは考えにくい」。これは過去に朝日新聞が報じた「兄が80歳のとき、私は70代半ば。それからは(即位することは)できないです」と秋篠宮さまが発言されたとする記事をベースにしているようだ。

 皇室典範第三条には「皇嗣に精神若しくは身体の不治の重患があり、又は重大な事故があるときは、皇室会議の議により、前条に定める順序に従って、皇位継承の順序を変えることができる」とある。この規定を使えば、将来的に秋篠宮さまが即位を辞退されることはあり得るかもしれない。それでも、秋篠宮さまが天皇になることが確定していないというのは論理の飛躍ではないか。陛下にご病気などで突然のことがあることだって考えられる。その時にも「(秋篠宮さまが)天皇になることが確定していない」となれば皇位は一体どうなるのか。要は皇位が秋篠宮さま、そして悠仁さまへと継承されていく現行法での既定事実を認めたくないだけなのではないのか。氏が女性・女系天皇を目指したいのであれば、現在ある皇室典範の規定を認めた上で論を展開しないと、ただの感情的な発言で終わってしまう。安定的な皇位継承を説きながら、逆に不安定化させようとしているのではと勘ぐりたくもなる。

 高森氏はコメントの中で「今の時点で皇位継承順位が一位の皇嗣」という言い方もしている。これはいったいどういう意味だろうか。宮内庁の現役幹部の一人は「先はどうなるかわからないと言っているのに等しく、皇太子相伝の壺切御剣を親授された天皇陛下だけではなく、朝見の儀で『(皇嗣として)これからも力を尽くしてまいりたい』と述べられた秋篠宮殿下に対しても、極めて敬意を欠いた物言いだ」と表情を曇らせる。過去に多くの啓蒙書を著し、皇室を敬愛していたはずの人物の発言だけに残念でならない。

椎谷哲夫(しいたに・てつお)
昭和30(1955)年宮崎県都城市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、中日新聞東京本社(東京新聞)編集局で警視庁、宮内庁などを担当。宮内庁では5年余にわたり昭和天皇崩御や皇太子ご成婚などを取材。休職して米国コロラド州で地方紙記者研修後、警視庁キャップ、社会部デスク、警察庁担当。在職中に早大大学院社会科学研究科修士課程修了。総務局、販売局、関連会社役員を経て昨年9月末、編集局編集委員を最後に退職。現在、ジャーナリスト(日本記者クラブ会員)として活動。著書に『皇室入門』(幻冬舎新書)など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年12月18日掲載

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