中国「ウイグル問題」を無視の国連部会が「ゴーン勾留」を非難 過去には「慰安婦問題」にも言及
「国連」と名がつけば御託宣かと思うのは日本人の悪い癖。だが、先ごろ国連人権理事会の部会が出した日本の司法制度批判は、いくらなんでも見当外れで……。
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日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が金に飽かせ、元グリーンベレーまで使って日本を脱出してから1年。
そんな折、先月20日付で、国連人権理事会の「恣意(しい)的拘禁に関する作業部会」が、ゴーン被告の逮捕と勾留を「根本的に不当」「勾留状況は時代錯誤的」と難じる意見書をまとめたのだが、
「公判前の勾留は例外的なもので、できるだけ短期間にするべきだ。勾留が繰り返されたことは国際法のもとで根拠がなく、違法な訴訟手続きの乱用だった」
という、それこそ法的根拠のない主張で、ゴーン被告の勾留が「恣意的な拘禁」にあたると結論づけている。これに政府は即刻抗議。上川陽子法相曰く、
「我が国の刑事司法制度を理解せず、ゴーン被告側の一方的主張のみに依拠した、事実誤認に基づく意見書が公表されたことはきわめて遺憾で、到底受け入れることができない」
あくまで一作業部会の意見書で、国連や人権理事会の公式な見解ではなく、法的拘束力もない。
とはいえ、国連の名を冠し、公式なイメージが強い。国連がゴーン被告の言い分にお墨付きを与えて擁護し、日本の司法制度を批判したと受け止める人があってもおかしくないのだ。
中国に対する甘さ
この国連人権理事会という組織は、過去にもいわゆる慰安婦問題の完全な解決を日本政府に要求するなど、これまでも向けるべき矛先をまちがえる感があった。それゆえに、
「政府があえて反論する価値もない意見書です。そもそも、ゴーン被告は逃亡した人間。犯罪者を擁護するのはいかがなものか」
と、政治評論家の屋山太郎氏。
「人権理事会の体質は、前身の人権委員会から変わっていません。スリランカ人女性活動家によるクマラスワミ報告書がいい例です。人権委員会は、真実でない証言に基づいて報告書を作り、慰安婦を問題にした。いま、ウイグルなどで中国によって人権侵害が起きているのに、なぜ触れないのか。ゴーン被告の扱いなんかにケチをつけている場合ではないでしょう」
ウイグルの人権侵害とは、中国西部の新疆ウイグル自治区で民族根絶やしを狙った強制不妊手術や大量拘禁が行われている事態をさす。外信部デスクによると、
「この人権侵害を非難する書簡を、EUやカナダ、日本などが公開しても、中国への公式の批判声明が出されることはなく不問に付されました。中国の息がかかったロシアや中東諸国、シリアなどが中国支持の書簡を提出し、人権理事会がなびいたためです。要は、国連の姿勢には、中国に対する甘さがあるんですよ」
中国におもねるのはWHOもそうだった。中国出身の評論家、石平氏の見方は、
「中国が国連内での影響力を使ってゴーン被告の件で日本を批判。自国の問題から目を逸らさせようとしたのかもしれません」
人権、人権と言いながら、国連人権理事会の作業部会は一体どういう人権感覚をお持ちなのか。