バイデンは金正恩とどう対峙するか オバマ時代のようには絶対いかない事情

国際 韓国・北朝鮮

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核弾頭の量より質を重視

 したがって、北朝鮮は核弾頭の数を大幅に増やすことよりも、米国からの第1波の攻撃に備え、核弾頭を搭載した弾道ミサイルを残す。その上で米国に反撃するため、当面は移動式の発射機(TEL)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発に比重を高めるだろう。

 SLBMの開発とともに、弾道ミサイルを搭載する潜水艦の建造も加速させるだろう。現時点ではSLBMを2発程度しか搭載できないため、潜水艦の大型化を推し進めることが予想される。

 また、ミサイルの多弾頭化(MIRV・複数個別誘導弾頭)を進めるだろう。MIRVとは、1基の弾道ミサイルに複数の弾頭を搭載し、それぞれの弾頭が異なる目標に攻撃ができる弾道ミサイルの弾頭搭載方式である。中国の場合はICBMであるDF-41(射程15,000km)に10個の弾頭を搭載しているとされている。

 弾道ミサイルに複数の弾頭を搭載するためには弾頭を小型化する必要があるが、もし北朝鮮が中国なみのMIRVを開発してしまったら、日本のミサイル防衛にも大きな打撃を与えることになる。一度に大量の弾頭が日本列島に向けて落下するため、迎撃ミサイルの数が足りなくなる可能性があるからだ。

バイデン政権の選択肢

 バイデン政権は政権発足当初は北朝鮮との交渉を行うことを否定するだろうが、経済制裁に効力が期待できないと分かった時点で、第2段階の直接交渉に進まざるを得ないのではないだろうか。北朝鮮を放置、すなわちオバマ政権の「戦略的忍耐」のような政策を取ることは、米国の安全保障に深刻な影響を与えることになる。

 それだけではなく、バイデン政権の対北朝鮮政策によっては、日本にとっても北朝鮮の脅威が増大することになる。もはや北朝鮮の内部崩壊を待っている場合ではない。朝鮮半島の非核化を実現するために、長い道のりになるだろうが交渉を重ねていくしかないのではないだろうか。

宮田敦司/北朝鮮・中国問題研究家

週刊新潮WEB取材班

2020年12月11日掲載

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