リアリティーも過激度も断トツ…山口紗弥加「38歳バツイチ独身女」の不思議な雰囲気

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 良い人しか登場しないドラマが目立つ中、クズ男ばかり登場する逸作がテレビ東京で放送中だ。それは「38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記」(水曜深夜0時58分)。タイトルは現在放送中のドラマの中で一番長い。リアリティーも過激度もダントツだ。なにより、個性的で面白い。

 このドラマは、普通なら落ちついていく年齢の女性が、マッチングアプリによって青春を取り戻し、男性遍歴を重ねる冒険記。昭和期のお色気ドラマと違い、裸が登場するわけではないのに、不思議なくらい雰囲気がある。

 主人公の松本チアキを演じる山口紗弥加(40)は実力派だが、助演を中心とする人なので、派手な存在ではない。それが功を奏し、チアキという存在はまるで隣人のようで、彼女が快感をおぼえている時の表情やあえぎ声に妙なリアリティーを感じさせる。

 性行為にいたるまでのストーリーもまたリアル。男がやりたいとせがみ、チアキは根負けして応じるものの、最後は自分のほうが感じてしまう。いきなり行為という展開のアダルト作品より興奮をおぼえる人もいるだろう。

 チアキはイラストレーター。以前はデザイン会社に勤めていたが、現在はフリー。24歳で結婚したものの、35歳で離婚した。

 男性経験は少なく、「ほぼ元ダンナ」だったが、友人に教えられて、アプリを使い始めたところ、たちまちその面白さにハマってしまう。この辺もリアルだ。

 タイトルを見ただけでも中身の見当が付く人が多いだろうが、中にはマッチングアプリを知らない人もいるかも知れない。実際、チアキ役の山口も出演依頼を受けた際には「マッチングアプリって何ですか!? が正直な感想だった」(ドラマの公式ホームページ)という。そこで、歴史を簡単に振り返りたい。

深く考えず登録すると…

 マッチングアプリのルーツは携帯電話(ガラケー)やパソコンの出会い系サイト。1990年代半ばに生まれた。1985年に1号店が開業したテレクラ、1986年にNTTが始めた伝言ダイヤルの流れを汲むものと言って良かった。

 その分、出会い系サイトはイメージが良いとは言えなかった。事実、援助交際のツールとしても使われていた。

 このため、「恋人とは出会い系サイトで知り合った」「出会い系サイトで知り合った人と結婚した」と口にする人はまずいなかった。

 風向きが完全に変わったのは通信端末の主流がガラケーからスマホに変わった2015年前後。出会い系サイト業者が新たに作ったアプリと新興業者が作った出会いのためのアプリが一律にマッチングアプリと呼ばれるようになり、負のイメージが払拭された。

 アプリが身近な時代となったから、ドラマ内のチアキも深く考えずに登録した。それにより登録男性の顔写真や職業などが分かる権利を得たチアキは目を丸くする。イケメンばかりだったからである。

 いくら見ても飽きなかった。

「ダメだ、底なし沼だ」(チアキ)

 すると、さっそくメッセージが届く。文化系でメガネの大学生【1人目】だった。登録写真がイケメンだったので、居酒屋で会うことになった。

 ところが、写真と実物が違う。まるで冴えなかった。別人ではないが、登録写真はイケメンに見える角度から撮影されていた。

 チアキは早々とアプリの現実の一部を知らされる。そんなにイケメンばかりが登録しているはずがない。

 おまけに店を出たら、文系大学生君は「もう電車がないです。送ります」などと面倒臭いことを言い始めた。泊まりたいのである。チアキがきっぱり断ると、何も言わずに走り去った。

 首を傾げるチアキに対し、友人のリカ(町田マリー、41)は「ヤリモクだったのかもね」と、教える。アプリ利用者がよく使う造語で、体目当てということだ。もちろん辞書には載っていない。

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