「富士急ハイランド」存続危機の理由 賃料が6倍に変更、山梨県知事「適正な賃料にすべき」

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「甲斐の虎だ」

 窮地に立ったかに見える富士急サイドに聞くべく、光一郎社長の自宅で取材を申し込むも、見解を伺うことは叶わなかった。当の詔子氏もお公家集団と揶揄される岸田派所属ゆえ、喧嘩を嫌っているのか、事務所を通じて、

「回答を差し控えます」

 と言うのみ。代わって同社の担当者が言う。

「別荘管理事業については管理費用で1億円以上を要し、赤字で運営しており、また、ゴルフ場も冬季に4カ月の休業期間もあり、赤字となっています。20億円がそのまま請求されれば、経営は非常に苦しいものになります」

 としてこう憤る。

「20億円というのは、とても恣意的な数字だと思います。山梨県が依頼した不動産鑑定士は原告側の訴訟提起に際し助言をしていた人物で客観性が担保されていません。さらに別荘地は住宅が建っている部分の割合が低い。我々としてはこれまで通り、開発者利益を尊重していただき、原野としてこの土地を評価していただくのが正しいと思っています」

 富士急が行った開発により、観光などで人を呼び込んだ功績を主張してもよかろうに、その反論はどこか遠慮がちに映る。一方、長崎知事サイドは二階派お得意の喧嘩上等の構えだ。さる県庁幹部は賃料裁判の陰に埋もれた問題を指摘する。

「実は富士急が県から借りている440ヘクタールのうち、17ヘクタールは『演習場内別荘敷』という名目で自衛隊の北富士演習場の敷地にあたります。演習場なので別荘は当然なく、富士急はここを格安で県から借りた上で国に又貸しのような形で提供し、これに対する交付金として年間約1800万円弱が県から支払われている。賃料と差し引いてもこれまで累計で1億円以上は利益を得た計算です。事業も何もせず、土地を借りて転貸しただけ。濡れ手で粟の状態ですよ」

 さらに巨額の賠償請求にも言及する。

「今後、県は富士急に対して不当利得の返還請求裁判を起こす可能性があります。すると、時効までの過去10年について返還を求めることになる。これまで、年間17億円の差額を得てきたわけですから、その額は170億円まで達することもありえます」

 どうやら、お家断絶、取り潰しにまで追い込むおつもりのようだ。

 人は城、人は石垣――。

 昨年の県知事選、応援に訪れた小泉進次郎衆院議員は武田信玄の言葉を引き合いに出し、

「県と国をまとめる力を持つ長崎候補は現代の甲斐の虎だ」

 と熱弁していた。

 県政トップは文字通りの虎へと豹変し、お行儀の良い名家を虎視眈々と狙う。無論、歪んだ行政は正さなくてはならないが、果たして県民のためになるや否や。信玄の言葉は「情けは味方、仇は敵なり」と続いている。

週刊新潮 2020年12月10日号掲載

特集「『富士急ハイランド』存続危機! 『堀内王国』VS.『二階派首長』怨念の『山梨15年戦争』再燃! 90年の県有地格安賃貸しに『待った!』 あの『ハンコ知事』が突如『富士急』に仕掛けた巨額地代請求の軍略」より

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