吉村知事「トリアージ発言」の波紋 米国はガイドラインを作成、日本ではまず無理?

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府医師会は懸念を表明

 吉村知事の発言が広まったのか、ネット上では「知事が命の選別を命じた」といったようなデマは減少している。だが、発言自体を巡って、賛否が割れている。

 例えばTwitterなら、《吉村知事がトリアージと言ったのは病院振り分けの話の時だよ》などと理解を示す意見は多い。

 だが、《感染者増大、病床逼迫という中では「命の選別」と捉えるのが普通ではないでしょうか》などと、トリアージという言葉を安易に使ったと批判する意見も根強い。

 毎日新聞は28日、「新型コロナ 大阪『緊急事態宣言級』 稼働病床、切迫85%」の記事を掲載した。

 この記事で、《府の新型コロナウイルス感染症対策協議会の委員を務める茂松茂人・府医師会長》が吉村知事の姿勢を批判している。ご紹介しよう。

《「感染拡大が食い止められなければ、医療現場で命を選別する『トリアージ』を実施する最悪の事態になってしまう」》

 だが、欧米の新型コロナ禍に詳しいジャーナリストは、「結果的に、極めて重要な問題が提起されたのではないでしょうか」と指摘する。

「少なくともイタリアとアメリカでは、まさに“命の選別”が行われました。感染拡大を止められないと、日本も同じ状況に陥るかもしれません。吉村知事の発言は、今後の警鐘と受け止めるべきではないでしょうか」

イタリアのトリアージ

 イタリアやアメリカでのトリアージは、どんな状況だったのか。かなり早い段階で報じたメディアの1つに読売新聞がある。

 3月24日に掲載した記事、「新型コロナ 欧州 猛威に医師悲鳴 患者選別『奇跡起こせない』」でイタリアの深刻な状況を伝えた。

 イタリア北部の街で働く医師は、読売新聞の取材に以下のように答えている。

《「呼吸器系疾患の治療には本来、専門的な知識が求められる。医師の処置や医療従事者による看護が常に必要で、この病院では10~12床が限界だ。しかし今は満床の上に約500床が呼吸器系の患者で占められており、あり得ない事態だ」》

《北部のある病院の医師は地元紙に「奇跡を起こすことはできない。生き残る可能性がある患者だけに治療を試みている。戦争状態の時に行うことと同じだ」と語っている》

 毎日新聞は4月4日、「追跡:新型コロナ 世界100万人感染 命に線引き イタリア、回復しやすい患者優先 スペイン、高齢者見捨てた施設も」の記事を掲載した。

《感染拡大に歯止めがかからないイタリアやスペインでは、事実上の医療崩壊が起き、現場では生存する可能性がより高い患者を優先する「命の選択」を迫られている》

《(編集部註:トリアージで)年齢を判断基準の一つとする方針は現場で採用されており、目安を80歳から75歳に引き下げた病院もある(略)感染するまで健康だった80歳の患者が呼吸器をつけられず死亡した例もあったという》

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