「能見篤史」は再生可能か? “戦力外”でもまだまだやれそうな選手リスト

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 各球団から来年の契約を結ばない、いわゆる“戦力外”となった選手が連日のように報道されている。通算2171安打を誇る内川聖一(前ソフトバンク)は水面下で争奪戦が繰り広げられ、早くもヤクルト入りが決定的とされるが、ほとんどの選手は引退の危機に立たされている。12月に開催される予定の「12球団合同トライアウト」でアピールするか、来るか分からないオファーを待つしかないというのが現状だろう。だが、中には環境を変えれば、まだまだ活躍できる選手も少なくない。そんな再生の可能性を秘めた選手と、戦力的にマッチしそうな球団をピックアップしてみたい。

 素材の良さはありながらも、球団から早く見切られてしまったという印象が強いのが近藤弘樹(楽天)だ。岡山商科大では150キロを超える本格派右腕として注目を集め、2017年のドラフトで「外れ外れ」ながらも1位指名でプロ入りしている。わずか3年間での自由契約には驚きの声が多かった。

 プロでの成績を振り返ってみると、一軍では17試合に登板して0勝4敗、防御率7.00とたしかに芳しくないが、今年は二軍で21試合に登板して防御率2.79とまずまずの結果を残している。一軍で登板した6試合ではいずれも150キロ前後をマークしており、武器であるスピードはプロ入り後も決して落ちているわけではなく、環境を変えれば、成長の余地は十分に残されているだろう。投球スタイルから見ると、リリーフの方が適性は高いように見える。近藤の地元である広島は経験のあるリリーフ陣が揃って故障で離脱しており、近藤のような大型で荒っぽい投手を戦力にしてきた実績があるだけに、獲得を検討しても面白い。

 実績のある投手で、まだ余力と需要がありそうなのが能見篤史(阪神)と藤岡貴裕(巨人)のサウスポー二人だ。能見は41歳という大ベテランながら、今年も一軍で34試合に登板し、阪神での最終登板となった11月11日のDeNA戦でも最速149キロをマークして、その健在ぶりをアピールしている。

 プロ入り前はとにかく故障が多い印象が強かったが、そんなイメージは全くなくなり、鋭い腕の振りから繰り出すボールにはまだまだ力がある。フォークという必殺の決め球があることも心強く、中継ぎに配置転換となっても、しっかりと調整して黙々と投げ続ける姿勢は若手にも好影響を与えるだろう。一部ではオリックスが獲得を検討していると報道されているが、左のリリーフが手薄なだけに戦力として十分期待できそうだ。

 一方の藤岡は、昨年シーズン途中に巨人に加入し、今年は一軍で12試合、二軍で22試合に登板している。入団当時のような150キロに迫るスピードは見られないが、フォームを大きく崩しているわけではなく、何かのきっかけで球威が戻ってくる可能性はありそうだ。本格派サウスポーでありながらも、コントロールが安定しているというのも得難い持ち味がある。学生時代に輝かしい実績を残した神宮球場を本拠地とするヤクルトは、投手陣の苦しいチーム事情を考えても、マッチするのではないだろうか。

 一方の野手で面白そうなのが田城飛翔(ソフトバンク)だ。2016年の育成ドラフト3位でプロ入りすると、3年目の昨年はウエスタンリーグで最多となる108安打、2位となる打率.307をマークしている。コースに逆らわずに広角に打ち分けるバットコントロールは、高校時代から定評があり、脚力の高さが魅力だ。今年は成績を落としたものの、高校卒4年目とまだまだ若く、今後の成長も期待できる。田城本人がソフトバンクでの育成再契約を断ったと報道されているが、かつて同じような立場から中日で一軍の戦力となった亀沢恭平のようにブレイクする潜在能力を秘めた選手と言えるだろう。若手の外野が手薄なDeNA、中日といった球団が獲得を検討してもいいだろう。

 他の野手で需要がありそうなのが藤井亮太(ヤクルト)だ。プロ入り4年目の2017年には、主にサードとして97試合に出場して75安打をマーク。その後は出場機会が減少しているものの、昨年は二軍で110安打、6本塁打を放ち、今年も一軍で存在感を示している。最大の武器は、捕手も含めた全ポジションを守れるという点だ。また、脚力も申し分なく、代走要員として起用することもできる。実績のあるユーティリティープレイヤーはなかなかいないだけに、手を挙げる球団が出てきてもおかしくないだろう。

 野手で意外なところではロペス(DeNA)も面白いのではないだろうか。メジャー、日本でいずれも1000安打を放っており、その実績は申し分ない。近年は故障が多く出場試合数は減少しているが、10月には7本塁打を放っており、その打力はまだまだ健在だ。そして、何よりも来シーズンからは外国人枠から外れて、日本人扱いになる点が非常に大きい。ビシエドが故障で早くも開幕絶望と見られており、ファーストに不安のある中日は、その穴埋めとして獲得を検討する価値はあるだろう。

 今年は新型コロナウイルスの影響で、マイナーリーグがシーズン中止となり、例年以上に新外国人の獲得は難しい状況となっている、そんな事情もあるだけに、他球団を戦力外になった選手から戦力を発掘しようと考える球団も必ず出てくるはずだ。ここで紹介した以外からも、鮮やかな復活を遂げる選手が出てくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月27日掲載

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