キャバクラ「リレー方式」の“客引き”で初の逮捕者 現役客引きはどう見たか?

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助け合い

 現在、池袋で活動する客引きの数は「新宿・歌舞伎町はコロナで閉めてしまったキャバクラが多く、池袋に流れてきた者が結構います。東口と西口、あわせて2~300人くらいじゃないですか」(同)。「リレー方式」で逮捕者が出たことに彼らは慄く。客の立場からはなかなか知り得ないのだが、客引きはフリーランスの立場の人間が圧倒的に多い。

「お店が雇っている客引きもいますが、自分を含め、基本的に客引きはフリーの人間です。店に客を連れて行けば、客が使った金額のうち良くて20%、基本は15~10%がバックとして収入になるのです。別の人間にお客さんを繋げば、実入り分は別の客引きと折半、あるいは4:6などで分け合うことになります。なぜそんなことをするかと言えば、“助け合い”なんですよ。

 平日なんて飲みに行く人も少ないから、お客ゼロで仕事が終わる夜も多い。週末にしたって、いまは居酒屋に行くだけで帰っちゃう若い人が多いでしょう。コロナもあって、特にみんな夜のお店には行かなくなりました。そういうとき、自分がボウズ(※一人もお客がかからなかったことを指す)であっても、他から繋いでもらえれば、少しは収入を得られます。だから自分は親しい客引きに客を回しますし、逆もしかりなわけです。ですから、今回、逮捕者が出たことは我々にとって死活問題でもあるわけです」

 店にとっても、お客がこなければ従業員の女の子の時給ばかりが発生し、赤字が膨らむばかり。そんな時に救世主になるのが客引きだ。フリーの客引きと何人付き合いがあるかが、店の売り上げに影響してくる。

 さらにいえば、その点で池袋という街と客引きは相性がいい。新宿や六本木などの街と比べ、往々にして池袋のキャバクラは“ゆるい”。夜の仕事で本気で稼ごうという女の子は少なく、その代わりにノルマを課している店は少ない。腰掛け程度に働いている子が多いのだ。となると、必死にお客に営業をかけるようなこともしないから、店は客引きに頼らざるを得ないというのだ。

 今回話を聞いたAさんは、過去は暴力団に所属していたという。彼のように、普通の仕事に就くことができない元ヤクザ、元ホストが客引きになることは珍しくない。ある意味で客引きは、夜の人々の“セーフティーネット”のような仕事なのかもしれない。

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月23日掲載

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