バイデン氏当選を中国が喜ぶ理由 「千人計画」の捜査中止、「共産党幹部の資産凍結」解除か

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「外交音痴」のハリス副大統領とともに船出することになるであろうバイデン政権。その悪影響は、日本の「困った隣人」にも及びそうで……。

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「正直、トランプ再選のほうがありがたかった」

 と、意外な本音を明かすのはある外務官僚だ。

「対中国を考えると、バイデン政権は心もとないですからね。トランプと習近平。ふたりの『強面(こわもて)』が対立してくれていたことで、日本はその間を取り持つ役割を果たせ、存在感を示せる面があった。しかし、どう考えてもバイデン大統領はトランプ政権に比べて対中弱腰になるでしょうからね」

 バイデン氏は大統領選期間中、表向き「中国の悪行や人権侵害に立ち向かう」などと発言していた。しかし、彼は対中融和政権として知られるオバマ政権で副大統領の職にあった人物だ。強硬発言は選挙用のリップサービスで、彼の本質は変わっていないのでは――そう見て外務官僚は嘆いたわけだが、実際、産経新聞ワシントン駐在客員特派員で麗澤大学特別教授の古森義久氏は、バイデン政権の対中姿勢をこう分析する。

「バイデン氏の発言をよく調べてみると、ほとんど中国には触れていませんし、触れたとしても具体的なことには言及していない。また、共和党と民主党で政権交代が起きた場合、前政権と真逆のことをやる傾向がある。トランプ氏が、対中融和的なオバマ氏と正反対の政策を実施したように、バイデン氏はトランプ氏とは逆に対中融和路線で行くことになると思います」

 とりわけそのバイデン政権の政策で注目すべきは「軍事」に関してだという。

「トランプ氏は国防費を5千億ドル台から7千億ドル台に増やしました。特に海兵隊の新戦略を打ち出し、南シナ海や東シナ海での海洋対策に力を入れてきた。これに対して、バイデン氏は国防費の削減を謳(うた)っています。軍事的にも対中融和になっていくことが予想されます」(同)

 習近平氏の高笑いが聞こえてきそうだが、福井県立大学の島田洋一教授はこんな展開も予測する。

「バイデン陣営から、温暖化問題で中国はパートナーになり得るとの声があがっているように、バイデン氏としてはとにかく中国との交渉のテーブルにつきたい。そんな彼が、トランプ政権が行った香港政府高官など中国共産党幹部11人に対する資産凍結を継続できるとは思い難いですね」

 さらに、トランプ政権では中国による科学技術の窃盗が指摘されている「千人計画」に関連し、その協力者であるとしてハーバード大の化学・化学生物学部長を逮捕するなど数十人を摘発する強硬姿勢で臨んでいたが、

「ハーバード大をはじめとするリベラルな学術界は民主党の支持基盤です。そこに民主党政権が切り込むことは絶対にできません。中国千人計画の捜査もトーンダウンするでしょう」(同)

週刊新潮 2020年11月19日号掲載

特集「『トランプ大逆転』がまだある最終シナリオ」より

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