ダル、田中将、前田健、藤浪… 大物「高卒ドラ1新人」の1軍初登板初先発を振り返る

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 今月10日、プロ野球ファンにとっては注目の高卒ドラ1投手がついに1軍デビューを果たす。星稜(石川)のエースとして昨夏の甲子園を沸かせた東京ヤクルトスワローズのルーキー・奥川恭伸投手のことだ。

 甲子園で活躍した注目の高卒ドラ1といえば、最近なら2018年のドラフトで北海道日本ハムファイターズへ入団した吉田輝星が思い浮かぶ。吉田はルーキーイヤーだった昨季、6月12日に札幌ドームで行われた広島東洋カープ戦でプロ1軍初登板初先発を果たし、5回を投げ被安打4、4奪三振、1失点という見事な投球内容で堂々のプロ1勝を飾った。

 では、奥川やこの吉田と同じように甲子園で活躍した注目の高卒ドラ1投手のプロ初登板初先発はいったいどのような結果を残したのか? 2000年以降、高卒新人ドラフト1位で入団した注目の投手たちのデビュー戦を振り返ってみたい。

 まず最初は05年、北海道日本ハムに入団したダルビッシュ有(シカゴ・カブス)だ。プロ初登板は翌05年6月15日の札幌ドームでの広島東洋カープ戦だった。彼はそのデビュー戦でいきなりの快投をみせた。なんと8回まで無失点投球を演じたのである。ルーキーの力投に味方打線も奮起し、3番・小笠原道大の2ランなどで計8点を奪った。援護を受けたダルビッシュは残る9回1イニングも続投。高卒新人でプロ初登板、初先発、初完封勝利を狙ったが、新井貴浩と野村謙二郎に2者連続のソロホームランを献上し、降板してしまう。

 それでも8回0/3を投げ被安打9、3奪三振、与四死球3、自責点2で堂々の白星デビューを飾ったのであった。このダルビッシュと対照的だったのが、06年のドラフト会議で4球団競合のすえ、東北楽天ゴールデンイーグルスに入団した田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)だ。プロ初登板初先発は翌07年3月29日にヤフードームで行われた福岡ソフトバンクホークス戦だったが、初回にいきなり相手の4番・松中信彦に先制打となるタイムリー二塁打を浴びるなど、1回2/3を投げて打者12人に対し被安打6、3奪三振、与四死球1、自責点6と散々なデビューとなってしまった。

 試合も7-9でチームはサヨナラ負けを喫した。しかし、4回に一時、同点に追いついているので田中に黒星はつかなかったのが救いだった。それでも現在メジャーで活躍している姿からは、想像もつかない屈辱のKOデビューとなったのであった。

 07年に広島東洋へ入団した前田健太(ミネソタ・ツインズ)は新人1年目での一軍登板はなかった。待望のプロ初登板初先発を果たすのは、2年目の08年4月5日の広島市民球場での横浜ベイスターズ戦でのことである。結果は2回表に吉村裕基にソロ本塁打を喫したものの、5回を投げ被安打5、1奪三振、与四死球3、自責点3というまずまずの内容であった。だが、勝ち星はつかなかった。チームは延長10回、4-3でサヨナラ勝ちを収めており、勝利に貢献したピッチングだったといえよう。

 09年にドラフト会議で6球団から1位指名され、競合のすえに埼玉西武ライオンズに入団した大型左腕・菊池雄星(シアトル・マリナーズ)は、利き腕の左肩痛の発症でプロ1年目の1軍登板はゼロ。結局、プロ初登板初先発は2年目の11年6月12日に行われた西武ドームでの阪神タイガース戦だった。結果は2回1/3を投げ、被安打6、1奪三振、与四死球1、4失点での降板となってしまった。試合はその後、3-4とリードされていた自軍が5回裏に逆転し、11-5で大勝を収めている。菊池に負けはつかなかったが、悔しいKOデビューとなったのであった。

 12年のドラフト会議で阪神に入団した藤浪晋太郎は、翌13年3月31日の開幕3戦目で早くもプロ初登板初先発を果たした。敵地・神宮球場での東京ヤクルト戦で、6回を投げ被安打3、7奪三振、与四死球4、2失点の力投を見せた。しかも自責点は、雄平に打たれたソロホームランの1点だけ。だが、味方打線が沈黙し、零封されてしまった。こうして0-2で惜しくも敗戦投手になってしまった藤浪であったが、それでも高卒新人投手が開幕3戦目で先発登板したのは、ドラフト制導入以降では松坂大輔&涌井秀章(いずれも当時、西武)の開幕4戦目を抜き、史上最速デビューという快挙だったのである。それだけに勝利投手になっていれば、さらなる快挙が重なったワケで、かえすがえすも残念であった。

 先の藤浪と同じ12年のドラフト会議で北海道日本ハムへ入団したのが大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)だ。入団前から投手と打者との“二刀流”を掲げていたこともあり、投手登録のまま打者としてプロ1年目から開幕1軍入りを果たしている。そして打者として翌年3月29日に西武ドームで行われたシーズン開幕戦となる埼玉西武戦でひと足先にデビューを飾った。8番・ライトで先発出場し、5回表にプロ初安打となる二塁打を放つなど4打数2安打1打点2三振と活躍した。一方、投手として待望の1軍初登板初先発を飾ったのは、同年5月23日に札幌ドームで行われた東京ヤクルト戦である。

 新人投手の初登板では史上最速となる157キロをマークするも、5回を投げて被安打6、奪三振2、与四死球2、自責点2という結果に終っている。なお、試合は1-3とリードされた8回裏に自軍の4番・中田翔が同点2ランを放って大谷の黒星を消している。結果、そのまま延長12回、3-3の引き分けであった。

 最後は“魔球”スライダーを武器に12年夏の甲子園で1試合最多の22奪三振をマークし、14年に東北楽天に入団した松井裕樹である。オープン戦から好調だった松井は1年目から開幕ローテーション入りを勝ち取り、4月2日に楽天Koboスタジアム宮城で行われたオリックス・バファローズ戦でプロ初登板初先発を果たした。結果は6回を投げて3失点と、メジャー流にいうなら、クオリティ・スタートという成績であった。が、被安打5、6奪三振、与四死球5という苦しい投球内容で、球団初の高卒1年目での初先発初勝利はならず。負け投手となった。

 以上、7人の投手のデビュー戦を振り返ってみた。ダルビッシュのように衝撃のデビューを飾った投手もいれば、藤浪のように好投しながら敗戦投手になった人、田中や菊池のように屈辱のKOデビューとなった者もいる。奥川はどのようなピッチングを披露してくれるのだろうか。令和の時代のニューヒーロー誕生を予感させる快投に期待したい。

上杉純也

週刊新潮WEB取材班編集

2020年11月10日掲載

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