【米大統領選】日本なら一晩で終わる開票作業 なぜそんなに時間がかかったのか

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“日本並み”の州も

 日本経済新聞(電子版)は同年10月21日、「衆院選、深夜にも大勢判明 35%の投票所で時間短縮」の記事を配信。全国の選管は午後9時45分までに開票を開始し、最も遅いところで、小選挙区は東京都の23日午前3時、比例代表は三重県で午前3時半に判明する予定と報じた。

 つまり日本は約1億1000万票を、遅くとも約8時間で集計を終える。ならばアメリカ大統領選の1億6000万票の開票作業を、日本人が朝までに終わらせることも可能なはずだ。

 これに対して堀田氏は「アメリカの名誉のため、いくつかの反論をさせてください」と言う。

「まず日本の自治体並みの優等生だった州もありました。カリフォルニア州やフロリダ州は有権者数が多く、作業は大変だったはずですが、投票日の翌日である4日朝ごろには大勢が判明しました。

 これは投票率の上昇や、新型コロナの感染拡大で郵便投票や期日前投票が増えることを予測し、開票作業の前倒しを行ったからです。郵便投票の署名チェックを40日前から行ったり、期日前投票の開票を22日前から行ったりした成果でした」

意外な理由で遅い州も

 一方、ペンシルベニア州は郵便投票で「本人確認などの開封・集計前作業を投開票当日まで行わない」ことが州法などで定められている。

「郵便投票が爆発的に増えることが事前に分かっていても、州法を改正する時間はありません。更に、郵便投票は手作業で開封する必要があり、本人確認はサインまで徹底して行います。どうしても時間がかかってしまうのです」(同・堀田氏)

 また、ネバダ州の場合は“トランプ対策”のため開票が遅れた可能性があるという。

「ネバダ州は、意図的に遅らせていると思います。激戦区になることは明らかでしたから、選挙の結果によってはトランプ大統領が訴訟を起こす可能性が高いわけです。裁判に耐えられるよう、極めて慎重に作業を行っているのでしょう」

 結局は「アメリカ合衆国」というだけあり、大統領選の開票作業でも50州の独自性が認められている。そのために足並みが揃わないということらしい。

 日本のSNS上では「4年後に備えて、様々な改善策を講じるべき」との意見が根強いが、堀田氏によるとそう簡単にはいかないという。

改善は困難?

「最もドラスティックな改革は、大統領選の全面的な電子投票化でしょう。実現すれば、それこそボタンを押せばコンマ何秒で集計は終了です。しかし、システムのハッキングなどの危険性がある以上、現実性に乏しいと思います」

 トランプ大統領は特に郵便投票の不正を訴えているが、実際に調査してみると不正は全体の1%以下だったというレポートも存在するという。

「日本人にとって、大統領選の投票と開票作業は欠点だらけに見えるでしょう。実際に欠点もありますが、とにかく国土が広いのです。

 人口の少ない地区は投票所に行くのも大変で、郵便投票が頼みの綱です。開票に時間がかかるからといって廃止するわけにはいきません。

 不正防止という観点1つとっても、なかなか現行のシステムを上回るものは存在しません。やはり4年後も同じ方法で投票し、開票するのではないでしょうか」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年11月8日掲載

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