「菅官房長官に話しに行く」と神奈川県を“恫喝” 「菅総理」密接業者が公有地を転売

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11年間で約350万円の献金

 そんな関係は2011年まで続くが、この年、河本代表はメディアを大きく騒がせる。3月11日、朝日新聞が当時の菅直人首相に外国人から献金を受けた疑惑があると一面トップで報じた。外国人から政治献金を受けるのは、政治資金規正法で禁じられている。その献金を行ったのが河本代表。実は彼は在日韓国人であり、在日韓国人系の信用組合「横浜商銀」(現・横浜幸銀)の非常勤理事を務めたこともある。

「その直前、同じ外国人献金問題で前原誠司外相が辞任に追い込まれたことから、菅直人首相にも進退の危機が訪れた。しかし同じ日、東日本大震災が起こり、この件はうやむやになったのです」

 菅直人氏は、2年間で104万円の献金を受けていた。他方の菅義偉総理は、「成光舎」名での献金であり、同社自体は河本代表以外が半数を超える株を持っているため、外国法人とは認められず、違法ではない。しかし、結びつきという点で言えば、少なくとも11年間で350万円弱を受けているから、菅直人氏よりもよっぽど関係は深いのである。

「その年の9月、菅さんは事務所を市内の別のオーナーのビルに移転します」

 それから2年後、神奈川県で異例の売却交渉が始まったわけだ。

「菅官房長官へ話しに行く」

 そして……。冒頭に述べたように、この蜜月関係を裏付けるがごとく、河本代表は交渉の中で、菅総理の名を出している。それも、2回も、だ。

 1度目は、2014年の1月21日。この時期、河本代表は再鑑定を巡って県と激しく揉めていた。その中で、正当性を主張する県に対し、彼は「対応によっては、知事、副知事、菅官房長官へ話しに行く」。

 2度目は2月25日。「いろいろとしっかり頼みますよ。納得がいかなければ、知事、副知事にも、官房長官にも行きますから」。

 この表現は県の内部文書から引いている。交渉に出席した県庁OBによれば、「お前なんかいつでも首にできる!というようなことを言われた記憶がある」。「官房長官」発言についても、実際はもっと激しい言葉が投げつけられていたのは間違いない。

 付言すれば、神奈川県において、菅総理の影響力は当時も今も非常に大きい。トップの黒岩知事は、菅総理が担ぎ出し、当選させた「直系知事」として知られているし、また、当時は、菅総理の公設秘書経験のある千田勝一郎氏が「知事特別秘書」として県庁にいた。また、県会議員の中にも、菅総理の秘書経験者が複数存在する。そんな中で2回も飛び出した「菅官房長官」の名は県庁職員の判断に影響を与えなかったのか。あるいは、より踏み込んだ菅総理周辺からの働きかけはなかったのか……。

 当事者に聞くと、

「当方の承知している経緯と違い大きく異なります。(菅総理に関する)発言をした事実はございません。(菅総理の関与も)ありません」(河本代表)

「(取引への)関与はありません」(菅義偉事務所)

 また、神奈川県も、関係者たちは揃って「適正な取引である」旨を説明する。

 しかし、

「明らかに不透明」

 と述べるのは、「かながわ市民オンブズマン」代表幹事の大川隆司弁護士。

「随意契約、求めに応じる形での再鑑定……いずれも公務員が個人の利益のために行動したような印象を受けます。売却後の無断転売も不可解。交渉の中で実質的な“脅し”の発言をしているように、政治的な要素が影響を与えた可能性は否めません」

 これが真っ当な評価であろう。

 思えば、森友事件では、安倍昭恵夫人の存在が大きな役割を果たしたとされている。では本件で「神風」は吹いたのか。吹いたとすれば、その主は誰なのか。

 その答え次第では、この変哲もない土地が、国政にも重大な影響を与える案件へと化けかねないのである。

週刊新潮 2020年11月5日号掲載

特集「『第二の森友事件』! 『菅総理』タニマチが公有地でぼろ儲け」より

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