「李明博」元大統領を有罪に 「文在寅」大統領が果たした「報復」の理由

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絶対に報復しなければならない理由

 実際、文在寅大統領にとって李明博は絶対に報復しなければならない理由があった。

 李明博が大統領の在任期間中、前任の盧武鉉(ノ・ムヒョン2003-08在任)に対する収賄の虚偽事実をでっち上げ、検察が逮捕に向けて動いていた。

 その矢先の2009年5月23日、盧武鉉は自宅裏山から無念の投身自殺を図った。

 当時は親・盧武鉉派であり、現在は親・文在寅政党である民主党は「政治的な報復」だと主張して強く反発。

 盧武鉉の自殺は、李明博が検察と国家機関、マスコミを掌握して作り出したという世論を形成し、李明博に報復する機会を虎視眈々とうかがっていたのだ。

大統領となったのは国家発展のためなのか、個人的な報復のためなのか

 文在寅大統領が就任すると、予想通り残酷な報復が続き、李明博の側近たちは複数の犯罪容疑で逮捕されて刑務所送りとなった。

 文在寅は次に、盧武鉉を死に追いやった最大の「元凶」である検察を「改革」の対象とした。

 朴槿惠と李明博を捜査して逮捕し、裁判にかけた論功行賞として検事総長に尹錫悅(ユン・ソクヨル)を任命。

 実際、「検察改革の適任者」、「政権の顔色をうかがわずに徹底した捜査をしてほしい」と述べていたのだが、尹錫悅が「タマネキ男」と悪名を轟かせた曺国(チョ・グク)など、文大統領の側近たちを逮捕して裁判にかけると、民主党を中心に検察の主要ポストへ親・文在寅派を配置させ、尹錫悅に圧力をかけた。

 特に「盧武鉉をペンで殺した」とされる朝鮮日報をはじめ、保守メディアへも民主党は強く圧力をかけた。

 李明博政権時の国家情報院長と関係者らが逮捕・裁判にかけられて有罪判決を受けてもいる。

 こうやって見ていると、文大統領が大統領になった目的は、国家を発展させるためなのか、個人的な復讐手段に活用することなのか、疑念を抱かざるを得ない。

 保守政党の候補として前回の大統領選挙に出馬した洪準杓(ホン・ジュンピョ)は、李明博に対する最高裁判所の判決が下されると自身のフェイスブックに「文在寅大統領は、賄賂と無縁なのか」、「歴史に残る最悪の政治判決」と非難した。

 現在韓国内では、文在寅大統領と民主党の側近らに対する様々な違法疑惑がかなりの数に上っているが、野党の力不足もあって検察の捜査が生温いという声が高まっている。

 次期大統領が保守党の人物となれば、文在寅大統領と側近たちも「政治的な報復」のターゲットになる可能性は極めて高い。

韓永(ハン・ヨン)
検察担当記者などを経て現在フリー

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月31日掲載

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