「35歳の少女」と「危険なビーナス」はココを見よ… 話題の秋ドラマを読み解く

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キャスティングが評判の「危険なビーナス」

 片や「危険なビーナス」は筆頭プロデューサーが共同テレビの橋本芙美氏(41)。やはり2011年の東日本大震災の1カ月半後に放送され、大ヒットした「マルモのおきて」(フジテレビ)をプロデュースした人である。疑似家族の愛情を温かい視点で描いた。

 ただし、今回は作風がまるで違う。東野圭吾ミステリーだ。主人公は獣医・手島伯朗(妻夫木聡、39)で、正義感が強い好漢だが、美女にはすこぶる弱いのが欠点。この設定は原作の通りで、不惑が近づいても青年のような雰囲気を失わない妻夫木には適役だろう。

 ヒロインは吉高由里子(32)。伯朗の異父弟・矢神明人(染谷将太、28)の妻を一方的に名乗る謎の女性・楓を演じる。原作では奔放な女性で、これもドラマでの吉高と一致する。

 物語は名家である矢神家の30億円の遺産をめぐるラブ&サスペンス。伯朗は突然訪ねてきた楓から「明人さんは失踪した」と告げられ、一緒に探して欲しいと頼まれる。

 もっとも、そもそも楓だって相当怪しい。本当に明人の妻なのか。未入籍である上、結婚を約束した証もない。

 仮に失踪が本当だとしたら、明人はなぜ消えたのだろう。楓は相続絡みで矢神家の誰かにさらわれたと主張しているが、本当にそうか。ただし、遺産争いが起きているのは事実。伯朗は熾烈な争いの深層を探る。

 このドラマについて芸能プロダクションの間で評判なのが、豪華キャストだ。例えば主演級の役者であるディーン・フジオカ(40)が、3番手の扱いで出ている。役柄は矢神勇磨。矢神家の養子で、遺産を狙っている一人だ。映画では主演級の染谷将太は4番手。染谷はドラマで主演することもある人だから、確かに贅沢な布陣と言える。

 この放送枠「日曜劇場」の前作「半沢直樹」の全話平均視聴率は24・7%で、爆発的ヒットを記録したのは知られている通り。やはり豪華キャストで、「制作費が上積みされているのではないか」と噂されたが、今回も普段より制作費がプラスされているのか。いずれにせよ、視聴者には悪い話ではない。

 初回は25分拡大で放送されたが、瞬く間に終わった感がある。脚色が巧みだったからだろう。今後、上々の視聴率を維持できるかどうかも脚色にかかっているだろう。

 原作は東野作品らしく伏線がいくつも張りめぐらされ、それが最後までにきっちりと回収される。物足りない思いを抱かせない。原作の読了後に味わえる満足感をドラマでも与えられるどうかがカギになるはずだ。

 こちらは世帯視聴率争いでのトップ候補だろう。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月17日掲載

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