「文大統領スルー」の北朝鮮が想定する 「バイデン当選」という悪夢

国際 韓国・北朝鮮

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アメリカ全土を射程圏内にする推進体を開発する

 北朝鮮にとって核兵器は、自国の存廃を決定する最後の砦である。

 交渉のリングで使える必殺技なわけだ。

 必殺技を捨ててリングに上がれば負けるに決まっている。

 それこそ北朝鮮が核を放棄できない理由だ。

 仲裁者を自ら買って出た文在寅政府の能力が問われるところだ。

 ひとまず、北朝鮮は韓国に融和姿勢でプレッシャーを加えた。

 もし文在寅政府が北朝鮮の望む結果を出さなかったら、北朝鮮の態度は様変わりするだろう。

 しかし、北朝鮮がいくら核で挑発をしても、アメリカはこれを静観するしかないと思う。北朝鮮への武力行使はロシア・中国が許さないので、安保理が動くことは、まずない。

 韓国も反対するだろう。日本も平和憲法がある限り独自には動けない。

東アジアにおける北朝鮮の軍事的威嚇は、日本の憲法9条の改正にますます正当性を与えるだろう。

 北朝鮮は、近いうちに、アメリカとの交渉で有利な位置に立つために、アメリカ全土を射程圏内にする推進体を開発すると思う。

そうなると、日本と韓国はよりアメリカに依存するしかなくなるのだ。現実に日本と韓国は、独自の軍事行動ができない上に、核兵器の製造も保有もできなくなっている。

 よって、アメリカを中心とする日米韓3国の軍事同盟はますます強固なものとなり、アメリカの影響力はますます大きくなる。そして、今より何倍もの予算をアメリカ軍の駐屯のために支払わなければならない。

 北朝鮮が日本と韓国を眼中に入れていない理由がここにある。

 しかし、残念ながら、この状況を打開する鍵は、アメリカと北朝鮮が握っているのだ。今のところ、韓国はともかく、日本のなす術はないのだ。

李東原(イ・ドンウォン)
日韓関係史が専門の評論家。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月15日掲載

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