民放で日テレだけが地上波プライムタイムの番組をネット同時配信する狙い

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テレビ離れからテレビ回帰に

「かつて日テレで毎日、放送開始時と放送終了時に流されていた“鳩の休日”ってご存知でしょうか。『ご覧のチャンネルは、JOAX-TV、日本テレビです。本日の放送を終了致します』というアナウンスの時に、鳩のイラストの動画があったのですが、これは日本テレビの開局(1953年)と同時にスタートした由緒正しい映像です。この鳩のデザインが『日テレ系ライブ配信』の待機画面に出てきます。日テレとしては、新たな開局という意識があるのでしょう」(同)

 日テレの公式ホームページからもワンクリックでTVerに飛ぶのも本気ゆえか。とはいえ、他局が心配するテレビ離れに拍車がかかるとの心配も分かる。日テレ関係者は言う。

「むしろ上層部は、テレビ離れからテレビ回帰へのきっかけにしたいと考えているようです。若年層のテレビ離れはもちろんですが、コロナ禍で巣ごもり生活となったテレビユーザーまで、NetflixやAmazon Prime Video、Huluといったオンデマンド配信で、好きな時に好きな映画やドラマを視聴するライフスタイルになりました。今やリアルタイムでテレビを視聴するのは意味がないといった考えが根付きつつあります。しかも、テレビがないところでも楽しめる、この同時配信が上手くいけば、テレビ離れしていたユーザーが『今度は大画面のテレビで見よう』という行動に出る可能性があるというわけです」

 TVerはインターネットにつながっているテレビでも見ることが可能だ。結局、テレビに戻らず、配信ばかり見るようになるのでは?

「TVerの入っているテレビでも、『日テレ系ライブ配信』は視聴することは出来ません。配信でテレビ番組も面白いと思ったら、テレビに帰ってきてくれればいいのです」(同)

 同時配信の広告料は見込めるのか?

「そこに目をつけた上で、無料同時配信に踏み切ったそうです。TVerもYouTubeと同じように、番組の途中にCMが入ります。ただし、YouTubeはCMをスキップすることができるのに対して、TVerはテレビ同様それはできません。必然的にユーザーは強制的にCMを見させられることになるわけですが、オンデマンドと違ってリアルタイムの配信であれば、民放の視聴と同様ですから仕方ないと思うはずです。そしてスポンサーは、ちゃんとCMを見てくれるなら、録画されてトバされるよりもマシと考えるでしょう」(同)

 テレビに比べると、ネットの広告単価は非常に安いが、

「単価は確かに安いです。しかし、18年のネット広告費は1兆7589億円と、地上波のテレビ広告費1兆7848億円に迫っています。すでにテレビ広告を止め、ネット広告のみに転じた企業も出てきています。さらにTVerは、CMをスキップされないということで、大手スポンサーによるCM出稿も増えてきているそうです」(同)

 日テレの同時配信は、SNSでは歓迎ムードのようだ。

〈今まで宮崎は民放が2局しかなかったんですがこれで民放が2・5局になったといっても良いのではないでしょうか。〉

〈日テレ系ライブ配信で「日テレ系人気番組No.1決定戦2020秋」を視聴。ひょっとしたらネット配信とはいえ、沖縄で見れるのは初めてかも?〉

〈TVerの日テレ系ライブ配信に23:30~の有吉反省会ある! 東海地方は遅れて再来週放送だから、リアタイできるのありがたい〉

「地方に住んでいる人が、東京キー局の編成番組が見られるというので、概ね歓迎されているようです。しかし、それにより系列ローカル局のテレビ離れが進んでしまうかもしれないという心配はあります」(同)

 12月までの実験配信が成功すれば、来年には本格運用が始まるという。はたして、他の民放はどうするのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年10月13日掲載

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