「ドラフト1位」出身高校別ランキング 2位は横浜、大阪桐蔭、広陵の11人、1位は?

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 ドラフト会議の開催がいよいよ近づいてきた。今年は10月26日に開かれる予定で、楽しみにしているファンの方も多いだろう。「あの高校からプロ入りした選手は何人いるか?」と、野球ファンの間で話題になることはあっても、出身高校別ドラフト1位指名者数については、意外と語られていない。そこで、過去55年間のドラフト1位指名選手(入団拒否も含む)のデータを出身高校別に振り分け、ランキングを作成してみた。

 作新学院出身の江川卓(1973年阪急拒否、77年クラウン拒否、78年阪神)のように複数回1位指名された選手は「1人」でカウント。01年から04年にかけて導入された自由獲得枠についても、1球団に2人の指名者がいた場合は「2人」とした。

 これまでドラフト1位を生んだ高校は394校。まずは6~15位から見ていこう。6位は桐蔭学園、報徳学園、九州学院の3校が7人で並び、9位は東北、仙台育英、作新学院、関大北陽、東洋大姫路、高知商の5校の6人。15位は、銚子商、日大三、東海大相模、愛工大名電、龍谷大平安、履正社、大体大浪商、智弁学園、箕島、智弁和歌山、高知の11校が5人で同一線上にひしめいている。

 九州学院は、吉本亮(98年ダイエー)、高山久(99年西武)、村上宗隆(17年ヤクルト)ら九州男児らしい豪快な長距離砲を輩出。東海大相模は、原辰徳(80年)、原俊介(95年)、大田泰示(08年)、菅野智之(12年)と、5人中4人までが巨人に指名されている。履正社は、大阪福島商時代のOBで、76年の阪神1位・益山性旭が第1号だが、指名直後、ドラフト会議で司会を務めた伊東一雄氏が「『性』はセックスの性」と紹介したことから、「そんな漢字あらへん!」と本人が怒ったエピソードも知られる。

 5位は中京大中京で、平林二郎(66年二次・阪急)、伊熊博一(同中日)、三輪田勝利(67年近鉄拒否、69年阪急)、樋江井忠臣(70年ロッテ拒否)、野中徹博(83年阪急)、伊藤敦規(87年阪急)、前田章宏(01年中日)、伊藤隼太(11年阪神)の8人。ドラフト草創期からプロの貴重な人材供給源だが、稲葉篤紀(94年ヤクルト3位)や嶋基宏(06年大社・楽天3巡目)のように2位以下で大成した選手もいるのに対し、「ドラ1組」があまり活躍していないのが気になるところだ。

 2位は横浜、大阪桐蔭、広陵の3校が計11人で並んだ。横浜は、永川英植(74年ヤクルト)、中田良弘(80年阪神)、愛甲猛(80年ロッテ)、紀田彰一(94年横浜)、松坂大輔(98年西武)、後藤武敏(02年西武自由枠)、涌井秀章(04年西武)、高浜卓也(07年高校・阪神)、筒香嘉智(09年横浜)、柳裕也(16年中日)、藤平尚真(16年楽天)。“松坂世代”以降が7人と、この20年余り、コンスタントにドラ1を出しつづけている。

 大阪桐蔭は、今中慎二(88年中日)、萩原誠(91年阪神)、西岡剛(02年ロッテ)、岩田稔(05年大学社会人・阪神)、辻内崇伸(05年高校・巨人)、平田良介(05年高校・中日)、中田翔(07年高校・日本ハム)、藤浪晋太郎(12年阪神)、森友哉(13年西武)、根尾昂(18年中日)、藤原恭大(18年ロッテ)。こちらも横浜同様、甲子園の常連になった02年以降に9人が指名され、直近20年の躍進ぶりが目立つ。

 広陵は、河本和昭(65年サンケイ拒否)、須山成二(66年一次広島)、佐伯和司(70年広島)、田村忠義(74年太平洋拒否)、白浜裕太(03年広島)、吉川光夫(06年高校・日本ハム)、野村祐輔(11年広島)、小林誠司(13年巨人)、有原航平(14年日本ハム)、上原健太(15年日本ハム)、中村奨成(17年広島)。やはりと言うべきか、地元・広島が半数近い5人に上る。

 そして、堂々の1位に輝いたのは、やはり名門・PL学園だった。

 66年の第2回ドラフト(一次)で、加藤英治が近鉄に指名されたのが第1号。以後、野口善男(70年大洋)、新美敏(72年東映)、西田真二(82年広島)、木戸克彦(82年阪神)、榎田健一郎(82年阪急)、西川佳明(85年南海)、清原和博(85年西武)、桑田真澄(85年巨人)、立浪和義(87年中日)、橋本清(87年巨人)、サブロー(94年ロッテ)、福留孝介(95年近鉄拒否、98年中日)、入来祐作(96年巨人)、今岡誠(96年阪神)、前川克彦(96年近鉄)、宇高伸次(98年西武)、田中一徳(99年横浜)、朝井秀樹(01年近鉄)、前田健太(06年高校・広島)の計20人が指名されている。

 競合抽選に外れた球団も含めれば、ヤクルトも95年に福留を1位で入札しているので、楽天参入以前の12球団すべてが1位指名したことになる。また、この20人だけでチームが組めてしまうのも、高校球界きっての人材の宝庫ならではと言える。野球部は16年限りで休部となったが、2位以下を大きく引き離しており、向こう10年は、トップの座は安泰とみられる。

 興味深いのは、ここまで名前が挙がった高校のうち、九州学院を除くと、いずれも春夏の甲子園で優勝、または準優勝経験があること。ドラ1を多く出している高校は、甲子園での実績とも関係が深いようだ。

 その一方で、甲子園出場こそ72年春、85年夏の2回ながら、京都の花園は、3人のドラフト1位、斎藤明雄(76年大洋)、中村武志(84年中日)、伊藤智仁(92年ヤクルト)が、いずれもプロで活躍した。鳥取城北も2人ながら、川口和久(80年広島)、能見篤史(04年阪神自由)の両左腕を送り出している。また、菊池雄星(09年西武)と大谷翔平(12年日本ハム)の母校・花巻東は、69年にも花巻商時代のOB・泉沢彰が西鉄に1位指名されているので、ドラ1計3人を輩出している。

 今年のドラフトでも、ランキング上位の高校にドラ1候補が何人かいる。順位がどう変わっていくのか、注目したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2019」上・下巻(野球文明叢書)

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月12日掲載

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