アメリカで「水の先物市場」がスタート 値段の決め方は?

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 世界最大の先物取引所として知られる「シカゴ・マーカンタイル取引所(以下・CME)」は、そのルーツをたどると、江戸時代の堂島米会所(大阪)に行きつく。ここで行われていた米の先物取引を参考に、アメリカでも商品先物取引が始まったというわけだ。そのCMEが、ナスダックと組んで「水」の先物取引を始めることになった。

 水の取引といってもミネラルウォーターを箱買いするわけではない。対象となるのは農業用や工業用の水で、カリフォルニア州では水利権者の間で水を売買できる市場制度がある。先物市場では、約32・5万ガロン(約1200キロリットル)を1単位として取引するという。

 でも、モノは水。値段はどうやって決めるのか。商品先物に詳しい日本取引所の担当者によると、

「カリフォルニアで売買される水の価格変動を表すものとして“ナスダック・ベルス・カリフォルニア・ウォーター・インデックス”という指数があります。CMEは、これを値決めの基準にするとしています」

 また、先物には期日というものがある。例えば原油の先物市場では、期日が来ると、最後に買った人は現物を引き取らなくてはならない。一方、水の先物取引では、何千トンもの水を受け渡しすることはない。「指数先物取引」と言って、数字のやりとりだけで取引が終わるようにしているからだ。

「現物の水を引き取る必要がないので、農業者や工場だけでなく、金融機関も取引できるようになる。マーケットに参加者が増えることで、水の値段がより公正に決まるというメリットもあるのです」(同)

 折からの異常気象もあってカリフォルニアでは今年も山火事が多発。消火のために大量の水が使われ、水のスポット価格も高騰した。「水先物」があれば、先回りで買っておいてリスク回避もできるという。

 経済評論家の山崎元氏が言う。

「CMEは、通貨やビットコインまで先物として上場している取引所です。日本人からすると、“水をマネーゲームのように扱うなんて”と思うかもしれませんが、むしろ、先物取引の対象になるのが遅すぎたほどです」

 ちなみに、直近の水の指数価格は、約500ドル。

週刊新潮 2020年10月8日号掲載

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