「半沢直樹」に家具提供の「大塚家具」、変わらず苦境 社員は上層部に恨み節

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“公開親子喧嘩”で世間を賑わせた大塚家具は目下、ヤマダ電機傘下で経営再建中である。だが、赤字続きにコロナ禍のダブルパンチをくらい、繰り出したカウンターも空を切って……。

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 もはや風前の灯。大塚家具を、そう評する向きは少なくない。ある経済部記者がその理由を語る。

「昨年、ヤマダ電機が大塚家具に救いの手を差し伸べ、子会社化しました。ヤマダ電機会長が“チャンスは与えたい”との意向で、大塚久美子社長は続投させてもらえました。しかし、凋落に歯止めがかかりません」

 まず、今年4月期決算で、

「純損益77億円の赤字を発表しました。4期連続の赤字です。そしてコロナ禍に見舞われ、4月決算以降も厳しい状態が続きました。9月11日発表の、今年5~7月期の決算では約10億円の赤字でした」

 売上高は約58億円だが、

「ヤマダ電機が子会社化する際に“2021年4月期の黒字化を目指す”と言っていましたが、もはや不可能です。今回の決算発表では、その21年4月期の業績見通しも、予測困難として見送られました。コロナでどうしようもないのかもしれませんがね。実際、“もう面倒みきれないかも”とボヤくヤマダ電機幹部もいますよ」

サーッと見て…

 そんな危機的状況を百も承知の久美子社長は、7月、SNSでこう呟いていた。

〈ドラマ「半沢直樹」で半沢の自宅に使われている家具も大塚家具オリジナル家具です。ダイニングのベストセラー「シネマ」。無垢材の温かみと造りの良さ、北欧調の優しいデザインで愛されています。お手頃価格なのも魅力〉

 前作の最終回で視聴率42%超を叩き出し、今作も先日の最終回が32%を超えた“おばけドラマ”にあやかりたかったのだろう。

 大塚家具は昨年来、家具専門から「家電も含めた生活提案」に業態変更。8月に入っても新宿や札幌といったショールームで従業員のコロナ感染が連発。“リモートインテリア相談”も焼け石に水……。

 この状況について久美子社長に訊ねたかったが、広報担当者が「時間が取れないのでお断りさせてください」。ならば、苦境の現場で働く店員はどう感じているのか。関東地方の複数店舗で本音を聞いてみた。都心店舗の大塚家具社員の話。

「半沢直樹とのコラボの効果は、特にないですね。赤字が続いている話も知っていますが、頑張って売るしかないと思っています」

 前向きな意見にもどこか諦念が滲む。一方、同店舗のヤマダ電機社員は、

「そもそも大塚家具さんとうちが一緒になったのを知っているお客さまは少ないんですよ。家具を目的に来られた方が、“家電もあるのか。じゃあ家のもの揃うね”と家電も買ってくださる。同じ売り場に家具と家電がある状態は、一定の効果は出ていると思います」

 と余裕の談。別のショールームの大塚家具社員は、

「ヤマダ電機に対する後ろめたさを持つ社員は多いです。社長はたまに現場の視察にも来ますけど、忙しい方なのでサーッと見て回ってすぐにどっか行っちゃう。赤字の説明や激励も何もないですね」

 いささか冷めた見方ながら、最後は溜め息まじりに、

「正直、親子喧嘩のときから、上層部のことは考えないようにしています」

 これでは赤字に千倍返しとはいくまい。

週刊新潮 2020年10月8日号掲載

ワイド特集「ご利益にあずかりたい」より

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