これから「人食いグマ」が増える 「シカ」とのヤバイ関係にも問題あり

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駆除されたシカがクマのエサに

 さらに、クマが増えた原因として、田中氏は駆除されたシカの処理と大きな関係があると指摘する。                                   
「現在、日本にはシカが400万頭以上いると言われています。増えすぎたため、年に50~60万頭駆除しています。本来、駆除したシカは土に埋めなければいけないのですが、山の中で深さ1メートル以上の穴を掘るのは至難の業です。ほとんどは埋めずに、落ち葉をかけて隠すとか、沢に捨てるというのが現状でしょう。そうした駆除されたシカがクマのエサになっているのです」

 シカの肉に味をしめたクマは、家畜や人間を襲うという。

「2016年の5月から6月にかけて、秋田県で起きた襲撃事件には驚きました。出会い頭ではなくて、クマが積極的に人間を襲ったのです。4人が死亡、4人が重軽傷を負いました。殺人グマと呼ばれていました」

 これは、「十和利山クマ襲撃事件」と呼ばれる、戦後最悪の獣害事件だ。十和利山の南麓に広がる酪農地帯で、タケノコ採りに入山した男女が次々にクマに襲われた。4人の遺体には、クマに食べられた痕があった。

 山間の集落や地方の田舎に出没していたクマは、今後、中小の地方都市にも出没するようになると予想する。

「10年後には、大都会でもクマは出没するようになります。2年前、北海道砂川市の市街地にヒグマが出没しました。猟友会が出動し、警官の許可をもらってクマを射殺しました。ところが、近くに人家があったため、『捕獲規制区域』となり、書類送検されてしまったのです。猟銃の所持許可も取り消されました」

 警官のピストルでは、クマに太刀打ちできない。

「警官が所持している38口径のピストルでは、クマは即死することはありません。ですから、獣害専門の警察官を設ける必要があります」

 山間の集落では、畑や家の周りを高さ2メートル程の柵で囲んでいるところが増えている。

「作物というより、身の安全のためです。田舎では獣害は日常となっています。都会の人ももっと獣害に対する危機感を持って欲しいですね」

週刊新潮WEB取材班

2020年10月9日掲載

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