3万人から2000億円 「豊田商事」になぜ多くの人が騙されてしまったのか?

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

「絶対に契約を取る方法がある」と教え込まれたセールスマンは3000人

 幹部から「絶対に契約を取る方法がある。それは契約するまで家を出んことや」とたきつけられたセールスマンは、ピーク時で3000人。

“ピラニア軍団”、“神風部隊”と自称した彼らに永野は、「固定給+最高30%の歩合給」という超厚遇で応えた。結果、20代の1億円プレーヤーもちらほら生まれている。

 被害者弁護団のメンバーだった大深忠延弁護士によると、

「彼らの手口は巧妙でした。実の子供より親切に接するような者もいて、“俺のことを息子と思ってくれていいから”と一緒に焼肉を食べに行ったり、添い寝をしたりした輩もいたそうです」

 先の児玉弁護士はこう見る。

「本社などの所在地は一等地にあって、これ見よがしに金の延べ棒が置いてある。もっともこれはニセモノだったのですが。社員のスーツ姿を見て、“ちゃんとした会社なんだな”と思ってしまう。そして、特筆すべきはグループ会社や関連会社の多さで、事実、120近くもありました。ほとんどがペーパーカンパニーだったとはいえ、組織表を見せられたら、 “こりゃ一大商社や”と勘違いしてしまうこともあったのではないか」

 では、濡れ手で粟のペーパー商法にも触れておこう。

 ありもしない金地金を顧客に買わせたことにして、「現物は会社で保管・運用」し、1年または5年後にこれを返還すると伝える。

 そのうえで、この間の配当金として、購入額の10%(1年契約)から15%(5年契約)相当を支払うという条件で、「純金ファミリー契約」に加入させるのだ。

 さらに、1度目の配当金は契約締結時に支払うことになっている。すなわち、金地金を時価の1割から1割5分引きで購入でき、その後も金の値上がり益と配当金を狙えるという話なのだ。
 
 顧客のもとに残された証書にはむろん、何の裏付けもない。しかし、これが客には単なる紙切れに見えなかったのは、先述したとおり、豊田商事の化けの皮の分厚さ故に他ならない。

次ページ:「この部屋に豊田商事の会長が住んでいたことはもちろん知っているし」

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。