香川照之は元祖「東大王」 東大卒業後、長く不遇な時代が続いた2つの理由

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主役を食う役者へ

「昼は下着デザイナーで裏の顔はヤクザの親分という人気コミック『静かなるドン』に主演し、91年から96年まで10本が販売されました。Vシネマは人気作となりましたが、テレビ版(日テレ)の主演は中山秀征(53)に……」(同)

 そこで、香川は中国へと渡った。

「チアン・ウェン監督の『鬼が来た!』です。98年には撮影に入り、当初は彼が主演と報じられていましたが、経緯は不明ですが完成時には準主役になっていました。終戦間近の中国で、抗日軍の捕虜となった日本軍人を演じたのですが、役作りのために人民解放軍に入隊させられ鍛えられたそうです。今思えば、のちの大河『龍馬伝』で演じた岩崎弥太郎に通じる荒々しさがあった」(同)

 同作は2000年のカンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞したが、香川自身もこの作品を転機と語っている。

〈大事にされて育ってきましたから。劇団で食えない時代に苦労したとか、バイトで食いつなぎながら役者を目指した、という体験もなく、生ぬるい環境で役者になった。監督の元で、それまでの自分を更生され、自分の定義をし直した〉

 まさにこの頃から、香川は助演賞男優と化していく。00年には「スリ」「独立少年合唱団」、02年は「刑務所の中」「KT」、04年の「赤い月」、05年の「北の零年」、06年の「ゆれる」、07年「キサラギ」、08年の「劒岳 点の記」といった作品で、数多の助演賞を受賞。主役を食う役者となったのだ。

「そして10年の大河『龍馬伝』では、岩崎弥太郎を演じつつナレーターも務めました。主演の福山雅治(51)の演じる龍馬が小綺麗であっさりなのとは対照的に、香川演じる弥太郎の汚く、濃い演技が評判となって、テレビでも存在感を見せつけるようになりました。11年には九代目市川中車を襲名して歌舞伎に進出。そこでさらに歌舞伎俳優としてのクサさも身につけた。それらを開花させたのが、前シリーズの『半沢直樹』最終回の“伝説の土下座”でしょう」(同)

 香川が大学を卒業した頃はトレンディドラマブームで、さらに東大卒がもてはやされる時代でもなかった。この2つの理由で不遇の時代が続いたといえる。

「半沢直樹」第2シリーズもいよいよ佳境、最終決戦に入る。はたして香川は、伝説の土下座を超える“決め技”を用意しているのだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2020年9月20日掲載

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