「認知症が進行」「子どもの免疫が育たない」 コロナ対策のさまざまな弊害とは

国内 社会 週刊新潮 2020年9月17日号掲載

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孤独の方が健康に悪い

 8月に厚労省が発表した「人口動態統計」によると、今年5月、6月の死者数は昨年より減少している。このことと、政府が新型コロナのピークアウトを認め、対策を方針転換すると発表したことを併せて考えると、我々は必要以上にコロナを恐れる必要はないのではないか。今後、これまでのコロナ対策を科学的知見に基づいて検証する姿勢も求められるだろう。

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 医師で医療ジャーナリストの森田洋之氏はこう語る。

「緊急事態宣言の発出、経済的自粛、移動制限などに、どんな効果があり、どんなデメリットがあったか、検証されるべきです。日本人は民度が高いから感染が抑えられた、という漠たるイメージのまま、結果オーライで終わらせようという流れを感じますが、それはとても危険です。人の命を守った、という触れ込みになっていますが、経済停滞によって自殺者が増えるかもしれない。それも射程に入れて検証すべきです」

 また、森田氏は別のデメリットも指摘する。

「ソーシャルディスタンスは、社会にとって大変なデメリットがあります。健康に悪影響をおよぼす因子として、酒、たばこ、肥満などが挙げられますが、医学的には、孤独のほうが圧倒的に健康に悪い、というデータが出ていて、特に高齢者にその傾向が強い。しかも、日本の高齢者は海外とくらべても孤立している割合が高く、特に奥さんに先立たれた男性は、1、2カ月、だれとも話さないケースも多いそうです」

 そうした実例を、循環器科、心療内科医で、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘教授の石蔵文信氏が挙げる。

「最近、私が診ている高齢男性が、認知症が悪化して自宅近くの通いやすい医院に移られました。コロナを恐れて家も出られない、という方が多く、この方がわずか1カ月ほどで悪化してしまったのも、そのせいだと思います。高齢者を守るために若者の生活を犠牲にしてきましたが、いまは守られていたはずの高齢者も弱ってきています」

子どもたちを襲うストレス

 死者は増えていない、という動かしがたい数字と真っすぐに向き合えば、さまざまな行動制限が無意味であるばかりか、むしろ命の危険につながることに、気づくはずだが。

 加えて、小中高生の感染者数にも、正面から向き合ってほしい。いま学校でどんな問題が起きているのか。その一端を教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が説明する。

「学校に来させているのに、昼休みにおしゃべりするな、友だちと触れ合うな、といった指示を出すなど、小さな子どもに無理を強いてストレスだけ与えるような状況は、いかがなものかと思っています。また、たとえば中学受験とのからみでこの問題を見ると、夏休みが短くなったことの影響が出ています。学校の遅れを取り戻すための授業と塾の授業が被ることも多く、中学受験生が内容はわかりきっている学校の勉強につき合わされた挙句、私語厳禁と言われるのは、やはりストレスです」

 子どもたちが、数々のストレスにさらされているというのだ。ちなみに都立学校の場合、〈12月までに実施予定の、児童・生徒等が学年を超えて一堂に集まって行う活動(文化祭、体育祭等)、宿泊を伴う行事や校外での活動は、延期又は中止とする〉と定められている。全国どこも似たような状況で、行事ができないのも、子どもにはストレスだろう。それはかけがえのない機会の欠損でもあり、子どもの成長には痛恨のダメージに違いない。

 子どもたちに重症化リスクがあるならともかく、重症者はゼロである。しかも、家庭内感染が655人で全体の56%、小学生では75%を占め、一方で、学校内感染は15%、小学生にかぎれば2%にすぎなかった。

 たとえば、名古屋市の小中高では、夏休み明けに新型コロナが不安で欠席した児童や生徒が、のべ2195人に達した。不安であるならなおさら、家にいるよりも学校に通ったほうが、安全なはずなのだが。

子どもの免疫が育たない

 国立病院機構仙台医療センターのウイルスセンター長、西村秀一氏が言う。

「子どもには感染が広がっておらず、重症化しないこともわかっているのだから、それを踏まえて対策を講じるべきなのに、決まりごとのように休校し、行事を中止にし、子どもの機会を奪っています。大人の感染者の濃厚接触者になり、PCR検査で陽性だった子が通う学校を何日も休校にするなど、かわいそうすぎます。屋外の感染リスクはかなり低いので、運動会はやっていいし、屋内でも、ウイルスは体外に出ればジワジワと死んでいくので、接触感染のリスクは低い。感染している子が目の前で咳をしたのを吸い込めばリスクがあるから、マスクはするとして、それなら飛沫が飛ぶのは周囲1メートルに満たない。教室は広いので換気をしていれば、リスクはほとんどないと思います」

 さらに西村氏は、こんな懸念も口にする。

「ウイルスは流水で十分洗い流せると思います。子どもが毎回、石鹸で30秒も手洗いをしていたら、強迫神経症につながって、病的に神経質な子どもが増えないかと心配です」

 重症化しない新型コロナへの感染より、強迫神経症を患うほうがよほど怖くないか。また、感染症に詳しい浜松医療センター院長補佐の矢野邦夫医師はこんな懸念を抱く。

「今年は厳しい新型コロナ対策のおかげで、例年は7、8月に子どもがかかる、小さな水膨れを伴う発疹のヘルパンギーナや手足口病が、まったく流行りませんでした。こんなことは初めてで、子どもたちはかかるべき感染症にかかっていない。抵抗力がある子どものうちに、ある程度感染して免疫を作ることができず、3、4年後、いろんな感染症にやられはしないか心配です」

 そして森田氏も、

「赤ちゃんも熱を出しながら、こういうウイルスにはこういう抗体、というように免疫を作っていて、新型コロナもその一つ。だから死亡者がいないのだと思いますが、それらを一つひとつ“恐怖のウイルスだ”と怖れ、排除したら、二つのデメリットが生じます」

 と指摘し、続ける。

「いまのように手洗いや消毒を徹底し、無菌状態でないとダメだという風潮だと、子どもの免疫力が育たなくなる恐れがあります」

 矢野氏と同じ意見だ。

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