「自己破産した人にお米をあげたい」 故・岸部四郎さんが語っていた凄まじい借金地獄

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高利貸しの誘惑

「『ルックルック』の司会で当時月二百万円のお金を得ていたとはいえ、二割は源泉徴収、別の二割が当時所属していたプロダクションに入る。そこから百二十万円を引かれると、それこそ何も残らない。そうは言っても芸能人としての人目もあるので、みっともない生活をするわけにもいかず、それなりの洋服を身につけたりするお金も必要だった。どう計算しても赤字になるのはあたりまえです。

 銀行からお金を借りようにも、せっかく建てた一億二千万の自宅も離婚でとられていたわけですし、僕には担保になるものが何もありません。そこに、高利貸しの誘惑があったわけです。

 なまじとりあえずの入金としての収入があったため、最初こそ月三分だと言われれば、『三百万借りて月九万円か』という感じで、しかも頼めばその日のうちに簡単にお金を持ってきてくれますから『これならば大丈夫じゃないか』と。それが三千万に膨れても『月九十万の金利ならまだなんとか払える』というふうになっていったんです。

 その頃、いまの妻と再婚することになり、それまで住んでいたボロアパートではなく、もう少しましなところに引っ越したり、家具を買ったりもしたかったので、ついつい出費が増えてしまい、高利の三千万を返すために資金繰りをしていた結果、いつのまにか何千万にも膨れあがっていました。

 そこへ来て、今度はタイガース時代から仲の良かった知人の会社が倒産してしまい、連帯保証人になっていた僕のところに回ってきた新たな借金を返すため、またもや高利に手を出し、それがさらに数千万にも膨れあがるという悪循環に陥ってしまった」

カモにされ億単位の借金に

 弱っている岸部さんに寄ってきたのは、タチの悪い筋の人たちだった。

「金の弱みを持つ者には、金の亡者たちが群がってくる――。金を貸す人間・借りる人間を探しているのを仕事にしている人間がこんなにいたのかと驚かされました。山手線内だけでも一万人はいるという彼らの横の連絡網というのはものすごくて、「岸部四郎がいける」ということになるとどこからともなくわらわらと集まってくるんです。

 一人が来ると次の一人が「『ああいうのに関わったら駄目ですよ。俺が全部助けるから』と言っては次々近寄ってくる」

 10日で1割の利子を奪うような輩たちが、カモとして岸部さんから金をむしりつづける。

「気がついた時には借金は何億にもなっていて、毎日が分刻みの金策でした。『ルックルック』が終わったあと反省会があるんですが、打合せ中に妻からポケベルが鳴るんです。暗号を決めておいて『07』というのが借金関係のことでのトラブルで、それが『07070707』とたくさん並んだ時がもう緊急の大トラブルなわけで、『ちょっと急用で……』と言って日テレの玄関を出るなり、植え込みの陰から慌てて電話をするんです。

 手形関係なら三時までになんとかしないといけない。番組が終わって局を出る十一時半くらいからでしたら、三時間しかないので、死に物狂いでした。一つが終わってもまた次のがやってくる。そんな終わりのない地獄のような堂々巡りのなかで、眠っている時以外、いや眠っている時ですら金策のことばかり考えていました」

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